単位は「℃」でも気温ではない「暑さ指数」WBGTって何?
熱中症の危険度を示す「暑さ指数(WBGT)」が、しばしば猛暑を伝えるニュースで登場します。環境省によると、この指数の単位は「℃」ですが、気温とは異なる値だといいます。一体、どのような値なのでしょうか。
WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、1954年に米国で提案された指標です。海兵隊新兵訓練所での熱中症発症の危険度を事前に判断するために研究、開発されました。 指数の計算には、人体に与える影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」の3つの要素を用います。通常の温度計を使う乾球温度(気温)、温度計の球部に水で湿らせたガーゼを巻いて測る湿球温度(湿度)、黒い球のなかに温度計を配置した黒球温度(輻射熱)の数値を、屋外の場合は(乾球温度×0.1+湿球温度×0.7+黒球温度×0.2)、屋内の場合は(湿球温度×0.7+×黒球温度0.3)という式に入力し、それぞれ算出します。
式でも明らかなように、算出された指数のうち、湿度のウエイトが全体の7割と大きな割合を占めています。湿度が高いと、汗が蒸発しにくく身体から熱を放出する能力が減少し、熱中症になりやすくなるため、重視されているのです。 WBGTを測定するための温度計は、複数のメーカーから提供されています。温度計がなくとも、環境省のウェブサイト「熱中症予防情報」をチェックすれば、日本各地のWBGTの数値を調べられます。
数値に応じて、どのような注意を払うべきなのでしょうか。日本体育協会が作成した「熱中症予防運動指針」では、 25~28℃は「警戒(積極的に休息をとり、水分塩分を補給)」 28~31℃は「厳重警戒(激しい運動や持久走は避ける)」 31℃以上は「運動は原則中止(特別の場合以外は運動を中止)」 などとしています。日本生気象学会でも、「日常生活における熱中症予防指針」を作成。 25~28℃は「警戒」 28~31℃は「厳重警戒」 31℃以上は「危険」 などと日本体育協会と同じくランク分けし、「危険」の時は「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」などと定めています。
環境省の大気生活環境室のまとめによると、WBGTが28℃を超えると熱中症患者の発生率が急増する傾向にあるそうです。同室は「基本的に、猛暑の日は熱中症のリスクが高まっていると考えて間違いないので、まずは気温に注意した上で、WBGTをチェックして熱中症の予防に役立ててほしい」と話しています。 (取材・文:具志堅浩二)