謎多き「稗之底村」 読み方は「ひえのそこ」… 廃村巡るツアーにファン注目 宇宙人説を唱える人も
長野県富士見町観光協会が町内の乙事地区に江戸時代まであったと伝わる廃村「稗之底(ひえのそこ)村」を、新たな観光資源として活用している。本年度のウオーキングガイドツアーに、稗之底村にまつわる伝承や都市伝説を解説するコースを新設したところ、定員を大幅に超える応募があった。都市伝説好きや旧跡ファンから注目を集めており、引き続きPRしていく考えだ。 【写真】富士見町内の廃村「稗之底村」を巡ったツアー
廃村理由は諸説「寒さか疫病か…」
「なぜ廃村になったのか考えてみよう。寒さか疫病か、それとも……」。今月上旬に開かれたガイドツアーで、ガイドがそう呼びかけた。参加者は稗之底村の痕跡をたどりながら廃村の謎について想像を巡らせた。 1763(宝暦13)年の乙事(おっこと)村(現富士見町乙事)の資料などによると、稗之底村では江戸時代前期、寒さで作物を育てるのが難しく、正保年間に住民が周辺へ引っ越したとされている。その後一部の住民は帰村したものの、やはり生活環境が難しく、乙事村に移り住んだという。 町観光協会の鈴木敏夫さん(63)は「気候が厳しかったのなら、気候の似た近隣の集落に移住するのは不自然。別の理由があったのではないか」と推測する。廃村の原因については諸説があり、廃村に残る岩に人の顔のような模様が彫られていることから「宇宙人が住民をさらっていったのでは」という説を唱える人までいる。
町観光協会は若い世代や観光客ら新たな参加者の掘り起こしを図るため、本年度から稗之底村を巡るガイドツアーを新設した。都市伝説やミステリー好きに狙いを定めて募集。定員の30人を上回る約50人の申し込みがあり、当日は35人を受け入れた。 稗之底村の歴史や都市伝説に魅了され、県外から足を運ぶ参加者も。東京都世田谷区の飯田玲子さん(54)は「生活の跡をたどることにロマンを感じる」。静岡市の会社員山本健さん(49)は宇宙人の都市伝説を知ってツアーに参加。「森の奥の稗之底村へ一人で足を運ぶのは難しい。ツアーは解説もしてくれるのでありがたい」と話していた。
迷いやすい森の中、ツアー利用を呼びかけ
定員を上回る参加希望の問い合わせに、町観光協会の鈴木さんは「手応えを感じる。県外からの関心もあるので、来年以降もツアーを開くなどして活用していきたい」と話す。探索ルートの整備を続けながら今後も観光資源としてPRする方針。 稗之底村は乙事地区にあるそば店「おっこと亭」から徒歩で20分ほど歩いた森の中にある。沢が入り組んでおり迷いやすいことから、町観光協会は単独で訪問するのではなく、ガイドツアーの利用などを呼びかけている。