メイプル超合金の安藤なつさんに聞く、「介護現場で見た、親と子とお金」。
親のことは親のお金で。できたら管理を早めに。
次に進めておきたいのが、親の現状を知るためのリサーチだ。 「今、どのくらいの財産を持っているかを聞ければ一番いいです。介護では、どんなサービスを受けるか、サービスにいくらかかるかを知る前に、いくらまでかけられるか、という部分を知っておく必要があります。はっきりした終わりが見えないものなので、まずは親の収入や資産で賄える範囲内で、介護の内容を考えることが大切」 でも、いきなりお金のことを聞かれたら、不信感を抱く親もいる。 「老化した事実を親に突きつけること自体、難しいことですよね。私と同じく介護福祉士の資格を持つ、知人の話なんですが……。高齢のお父さんが入院して、身体レベルが明らかに下がっているのに『退院しても運転免許は絶対返納しない』と言い張って困る、という話を聞きました。介護福祉士でも、実の親となると対応が難しい。普段からオープンにいろいろ話せる間柄という限定でなら、率直にお金の話を切り出す案もありかもしれませんが」
親のこの先について、できたら普段から雑談しよう。
ストレートに聞けなければ、人生プランに絡めて質問をしてみる。 「まずは、あくまで雑談の延長という体裁でリサーチしてみては。おすすめは、親が風邪を引いたり、怪我をしたり、ちょっと体調を崩し、その後復活したタイミング。たとえば『もし倒れたらどうする?』『もし認知症になったらどうしてほしい?』などと話をして、介護を自分ごとに捉えてもらいつつ、将来の介護のイメージを親子で共有します。そして、『気になることがあったら、相談できるところもあるよ』という話もしておくといいですね」 ある程度事前に介護の話をしておけば、実際に徐々に身体レベルが落ちてきたときに、しかるべき相談場所や病院にも連れて行きやすくなる。 「十人十色なので、こうなったらこうする、という答えはないんです。ただ、親の忘れ物が多くなったときに『最近忘れっぽくなっているし、一度プロに話を聞いてみようか』と言えたらいいですよね。でも、今までできていたことができなくなるのは、本人が一番ショックのはず。前触れもなく、子側が切羽詰まった状態でいきなり『病院に行こう』などと言い出したら、親側もプライドが傷ついて、意固地になる可能性も高いです。普段からできるだけこの先について楽しく雑談したり、親の変化をチェックできるといいですね」 また、お金の話はしづらいと避けていても、親が認知症になれば聞けなくなり、子どもは親のお金を動かせなくなってしまう。元気なうちに会話を重ね「いざというときのために、資産はどこに何があるか、分かるように書いておいてほしい」というお願いができるようにしておきたい。そもそも、親とお金の話をクリアにしておいて、と安藤さんが提案するにはワケがある。 「『家族が面倒をみなければ』と思い込んでいる人が多いのと同じくらい、『親の介護に必要なお金は子どもから出してあげないと』と思う人も多いんです。でも本来、親の介護は親のお金でするということが基本です。それは些細な出費でも同じです。たとえば、遠方から週1で親の介護に通う人がいるとしたら、電車賃くらい自分で出すと思うかもしれません。でも介護はいつまで続くか分からない。月数万円が何年も続いたら、けっこうな額です。小さな額でも“チリツモ”で自分への負担が増えていくと考えてほしい。親のことは親のお金から出してもらうのは、何もおかしいことではありません」