知られざる限界分譲地のトラブル。沼地を開発した第三セクター・秋住事件の顛末と、今なお続く難あり土地の宅地開発とは
今も続く、難ある土地の宅地開発
残念なことだが、地盤や立地に難のある宅地開発は、バブル期特有のものではなく今も続いている。その具体的な地名をここで挙げることはできないが、時代が変わっても、優先されるのはあくまで利便性で、その土地の持つリスクが後回しにされてしまう傾向は今もあまり変わっていない。 僕自身、こと災害リスクという観点では決して及第点ではない、海岸近くの分譲地で暮らしているので、リスクよりも別の要素を優先してしまう心情を責めるわけにもいかないが、それにしても、人生を懸けて返済を続けるような高額のローンを組んで購入した新築住宅でそのような事態が発生することなど考えるだけでも怖ろしい話だ。 もちろん、安い中古住宅であれば欠陥が出ても問題ないというわけではないが、少なくとも、これから空き家がさらに増加すると指摘されるこの時代、新規の住宅の供給にせよ、購入にせよ、もう少し慎重にならなくてはならない時代が来ていると思う。 分譲地にせよ、家屋にせよ、現代日本はもはやSDGsといった大仰なスローガンを持ち出すまでもなく、もっと切実に、後先を考えない使い捨てが許される情勢ではなくなっているはずだ。 モノクロ写真/書籍『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』より 写真/shutterstock ---------- 吉川祐介(よしかわ ゆうすけ) 1981年静岡市生まれ。千葉県横芝光町在住。主に千葉県北東部に散在する旧分譲地の探索ブログ「URBANSPRAWL─限界ニュータウン探訪記─」の開設をきっかけに、より探索範囲を拡大したYouTubeチャンネル「資産価値ZERO─限界ニュータウン探訪記─」を運営するほか、寄稿、講演などの仕事も手掛ける。著書に『限界ニュータウン荒廃する超郊外の分譲地』(太郎次郎社エディタス)がある。 ----------