テレ東田中瞳アナ「インパクトを残して帰る人たちが心底羨ましくて、恨めしかった」苦悩のとき転機となった“ある研修”とは?
「趣味」を聞かれるのが怖い
趣味はなんですか。休みの日は何をしていますか。特技はありますか。 こういう球をひとつひとつ上手く打ち返すことで、社会に放り出されたばかりの透明人間の私たちは、徐々に発色していくことになるんだと思っていました。ことテレビ業界においては、のちに目に見えて色の濃淡が出るものだとも。 入社して間もない時期、なにかパーソナルな質問をされるたびに、クラス全員の前で発表するときのような緊張感を覚えました。「嗚呼、まだ面接は続いているのだ!」と、途方もない気もしました。ありがちなことを言ったら凡庸だと思われて透明のままだ。没個性のハンコを押されたらバラエティのお仕事は来ないだろう。 さあ、どうする……! 数年前まで、本当に考えすぎていたと思います。 結局当時の自分が休みの日に何をしていたのかはひとつも覚えていないし、悩んだ末どう答えていたのかも忘れました。「キャラ」とか「個性」という単語にアレルギー反応が出ていたのは覚えています。上手に振る舞って、確実にインパクトを残して帰る人たちが心底羨ましくて、恨めしかったです。こんなことで悩む暇があれば、知識の引き出しをひとつでも増やすことに時間を使えば良かったのかもしれません。 でも、自分史上のどんな苦悶の時代も、決して不毛ではなかったと思いたい……というのが、数少ない、私が好きな私なりの考え方です。 悶々とした日々の中で、私にとって転機となる“ある研修”がありました。 今までの研修では、先輩たちは私たちに必要なことを「教えて」くれました。でもその日、その研修を担当した先輩は私たちにまず「聞いて」くれたんですよね。「もうすぐ各家庭のテレビ画面にあなたたちが映ります。発する言葉の持つ力は何倍にも大きくなります。今不安なことは何ですか?」と。 私はいい答えをほとんど期待せずに、個性アレルギーの苦しみを吐露しました。「キャラって必要なんですか?自分の個性が分かりません」。さて、その先輩が言うには、「そもそもあなたの個性は、これから一緒に働くなかでまわりが感じたあなたの印象だから、まだ自分自身でわからないのは当たり前」だそうです。人に相談して心が晴れることなんて本当にあるのかと、しばらく他人事みたいに感心してしまいました。 この一幕があったことで、私は次第に私のままに生きられるようになっていったのです。周囲からの反応を気にして、危うく完全に自分を見失うところでした。覚えていないかもしれませんが、あの時はありがとうございました。 そんなわけで、次回は私の愛するものや自分のこだわりをちょろっとご紹介したいと思います。 ちなみに特技は無いので、今でも頼むから聞かないでほしいと思っております。
【Profile】田中瞳
たなか・ひとみ/1996年9月16日生まれの28歳。東京都出身。2019年、成城大学を卒業後、テレビ東京入社。現在の担当番組は、『WBS』(月・火・金曜)、『モヤモヤさまぁ~ず2』など。
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