史上最悪の産廃不法投棄で「ごみの島」になった豊島 調停成立24年の今も残る傷跡と教訓
■岩盤むきだしの不法投棄跡地
瀬戸内オリーブ基金は調停成立の4カ月後、中坊弁護士と建築家の安藤忠雄氏が提唱して設立。島内へのオリーブ植樹をはじめ環境保全を目指す。
環境学習で生徒たちは2班に分かれ、資料館や不法投棄跡地を視察。廃棄物対策豊島住民会議が協力し安岐正三事務局長と石井亨さんが説明役を務めた。
また、資料館では特殊加工した実際の産廃の断面や事件年表などの展示を見学。調停申請した島民549人の名簿などから住民の闘いの長い歴史に思いをはせた。
28・5ヘクタールの不法投棄跡地は斜面が削り取られ、岩盤はむき出し。地下水は排出基準をクリアし、県の処理事業で海岸沿いに打ち込まれていた遮水壁の鋼矢板が撤去され、整地されて調整池が数カ所設置されている。
安岐事務局長は、汚染地下水が環境基準(人が飲める水)を達成すれば土地が県から住民に引き渡されることや、産廃が積み上げられていた高さなどを説明。「ここは瀬戸内海国立公園に属する美しい場所だった。自然が元に戻るにはこれから100年単位の長い時間がかかるとみられている」と述べた。
■次世代への継承が課題
参加した櫛田采花(ことは)さんは「岩や土、砂がえぐり取られた跡があり何十年たっても元に戻らないのは恐ろしい」、長谷川蒼岳(そうた)さんは「こんなに大きな規模で不法投棄をしていたとは。自分が住民だったらあきらめてしまうかもしれない」。また、笹本漣(れん)さんは「元の豊島を取り戻したいという住民一人一人の思いが強かったことが伝わってきた。身近なことから自然を守る行動を取りたい」と感想を述べた。
安岐事務局長は「伝聞ではなく実際に現場に来て当事者から話を聞いて五感で感じて自分の考えを持つことが重要。高齢化と過疎化が進む瀬戸内海の小島で、われわれがやってきたことや思いが少しでも理解してもらえれば」。基金事務局の清水さんは「豊かなふるさとを次の世代に残すのが活動の目的であり、その世代が豊島事件を知っただけで十分に意義がある」と強調した。
基金では事件を風化させず同様の事件を再び起こさせないために「ゆたかなふるさと100年プロジェクト」を進めており、子供たちを対象にした環境学習を継続していく方針で希望者を募っている。7月には米国大学生の研修プログラムを受け入れる予定だ。(和田基宏)