2人だけが“知っている”プレゼントにキュン…!紫式部の物語はどこへゆく|NHK『光る君へ』第33回
彰子の変化
一条天皇のお渡りがないことも悩みではあろうが、彰子の気持ちが見えないところも道長としては悩ましいだろう。何を欲していて、何が嫌なのかもわからない。ただ、最近、少しずつその心が垣間見えるようにはなっていた。 そんな彰子の本当の姿にまひろは気づき始める。こっそりと敦康親王(池田旭陽)にお菓子を渡してあげたり、まひろに「本当は空のような青色が好き」と言ってみたり。 大人になっていく中で、自我が大きくなっていったのか、ようやく彰子の中に何かしらの欲求が生まれたのか。 そのうちのひとつは間違いなく、一条天皇に対する思いだろう。一条天皇といるときや、話題が出ると少し表情が変わる。 まひろが物語のあらすじを話して聞かせると、主人公の「美しく賢く、笛の名手である皇子」のことを「帝みたい」とどこか嬉しそうに言う。何かに触れたときに思い出す人がいるのだとしたら、その人は自分にとって大事な人であることは間違いない。そのことに、彰子は気がついているのだろうか。
檜扇に込められた道長の熱い思い
まひろが書いた物語の続きは一条天皇の心を動かした。もっと多くの者に読ませたい、と言う帝に、まひろも表情を柔らかくした。昔から物語には人の心を動かす。損得だけではなく、シンプルに心が動く何かがある、というのは素晴らしいことだ。 一条天皇の心を物語で掴んだまひろには道長から、褒美が贈られた。 箱の中身は檜扇。するすると開いていくと、そこには幼い男女が描かれていた。それは、子どものころのまひろと道長……いや、三郎だ。 何も知らなかったころのふたり。その檜扇をまひろがそっと胸に抱く。道長はまひろとの思い出をひとつずつ、こうやって心に記憶してきたのだろう。まひろの着物の柄まで覚えてるのはちょっと驚いてしまったが……。 いや、でもキュンとしたものの、現代だったら何になるんだろう、と考えたのも事実である。
物語の始まり、まひろの物語のこれから
まひろが藤式部と呼ばれるようになり、「源氏物語」が広まっていく気配が感じられた今回。 まひろが「源氏物語」をどのようにして書くことになるのか、彼女のベースにあったものはなんなのか、ということが「光る君へ」のひとつのテーマだと思っていたが、書き始めた先にはどのような物語が展開するのかも興味深いところだ。 道長とまひろの関係性を注視してしまいがちだったが、ある意味、ひとつの形に落ち着いたとも言える。 もしくは、まひろが「作家」としての苦悩が描かれるのだとしたら、それはそれで目が離せない。 <文/ふくだりょうこ> 【ふくだりょうこ】 大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
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