インドネシアの富豪が銀座のホテルを「105億円」で買収、インバウンド需要に期待
インドネシアのパームオイル(ヤシ油)の富豪のバクティアル・カリムが設立した不動産開発会社インヴィクタス・デベロップメンツが、日本の急成長中のホスピタリティ業界に初参入し、東京・銀座にあるコリビング型ホテルのlyf銀座東京(ライフ銀座東京)を買収する。 シンガポールを拠点とするインヴィクタスは、この物件をシンガポール不動産大手のキャピタランド傘下のアスコットと、カタール投資庁の合弁会社である「アスコット・サービスドレジデンス・グローバル・ファンド」から7060万ドル(約105億円)で買収する。 全140室のlyf銀座東京は、銀座の一等地に位置し、京橋駅から徒歩2分、東京駅から徒歩10分という好立地にある。アスコットは、不動産サービス大手のJLLが仲介するこの取引が完了した後も、引き続き施設の運営を行う予定という。 カリムの息子、チャヤディ・カリムが率いるインヴィクタスは、オーストラリアやシンガポールでも不動産の買収を進め、今後の5年間で10億ドル規模のホテルを中心とした帝国を築こうとしている。同社は、5月にシドニーの15階建てのオフィスビルを取得し、152室のホテルに転換する計画を立てている。 インヴィクタスはまた、シンガポールの高級ホテル、シャングリ・ラのすぐ隣に143室のザ・スタンダード・シンガポールを建設中だ。 「lyf銀座東京は、当社にとって初めての日本での買収案件だ」とチャヤディは声明で述べた。インヴィクタスは、今後数年間で日本のホテルに対する買収をさらに増やしていく計画という。 日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2024年の年初から7カ月間の訪日外国人旅行者数は、2100万人に達し、前年同期の1300万人から62%増加していた。「インヴィクタスは、日本のホスピタリティ分野の将来の成長に非常に楽観的だ。日本のインバウンド観光地としての人気と円安がその要因となっている」とチャヤディは述べている。 チャヤディの父であるバクティアルは、インドネシア世界最大級のパーム油企業であるムシム・マスを所有し、兄弟とともに経営している。バクティアルの亡き父のアンワルは、1932年に最初の食用油工場を設立し、家族は1970年にインドネシアで初のパーム油精製所を開設し、その2年後にムシム・マスを創業した。バクティアルは、家族とともに総資産39億ドル(約5780億円)でフォーブス・アジアの『インドネシアの富豪50人』の第15位にランクインしている。
Gloria Haraito