『虎に翼』滝藤賢一の全てを包み込む笑顔 “家庭裁判所の父”多岐川が見せる最後の勇姿
多岐川(滝藤賢一)が最後の力を振り絞って反対した少年法改正
そんな多岐川が最後の力を振り絞って、少年法改正に反対する意見書を桂場に届ける。少年犯罪の厳罰化は現代でも頻繁に議論に上がり、2022年4月からは起訴された18歳または19歳の少年についての実名報道が可能となった。実名報道がされていなくてもSNSで犯人が特定され、私的に制裁が下されるケースも増えている。そんな今だからこそ、私たちは“家庭裁判所の父”である多岐川の声に耳を傾け、「法とは何のためにあるのか」という問いに今一度向き合う必要があるのではないだろうか。 そしてもう一つ、多岐川を語る上で欠かせないのが、香淑(ハ・ヨンス)と汐見(平埜生成)の存在だ。家族の反対を押し切って結婚した2人を家に住まわせている多岐川。もはや彼らは家族同然で、香淑と汐見にとっても多岐川は“父”のような存在と言える。香淑という名を捨て、日本人として生きる覚悟を決めた香子の決断も多岐川は尊重し、見守ってきた。しかし、香淑と汐見の娘・薫(池田朱那)は学生運動に没頭しており、間違った社会に声を上げなかった両親を拒絶している。その状況に多岐川が胸を痛めていないわけがない。おそらく彼は最後に薫とも向き合うこととなるだろう。 海よりも深い愛とユーモアで周囲を包み込んできた多岐川。どんなに緊迫した状況でも安心感を与えてくれる笑顔にもう会えなくなるのは寂しいが、その最後の勇姿を目に焼き付けたい。
苫とり子