【ミラノデザインウィーク】デザイン誌「カプセル」が仕掛けた“ラディカルな衝撃”
4月15日から21日までミラノ市内随所で開催されたミラノデザインウィークで、多くの注目を集めたのは「ラディカルな衝撃」を感じさせるデザインだった。 【ミラノデザインウィーク】エルメス、グッチのホームコレクション
ミラノデザインウィーク中、市内で1150 もの展示が開催されたなか、最も話題をさらった展示のひとつが「Radical Sensation」だった。出版を手がけるクリエイティブチームの「カプセル」が企画した展示では、気鋭のデザイナーたちによる先進的なアイデアのデザインが発表され、展示のタイトル通り、見た人たちの間でセンセーショナルな騒ぎを起こした。 もともと「カプセル」は、編集者のアレッシオ・アスカリと、建築家のポール・クルネが立ち上げた新しいデザインの視点を発信するためのプラットフォームだ。彼らが影響を受けたのは、なんと、1972年に誕生し、日本社会に衝撃をもたらした先鋭的な建築、中銀カプセルタワービル。建築家の黒川紀章が集合住宅として設計した中銀カプセルタワービルは、建築を固定化したものではなく、都市人口の増大とともに変容し、その都度既存の建築にカプセル状のユニットを足して増殖していくものとして捉えた。この進歩的な考えは、その後の建築のあり方や、住宅のあり方に新風を吹き込んだと言える。1970年代に生まれたある種の過激な考えに魅了された2人は、先の見通しの悪い現代、ともすれば失敗やリスクを回避する守りの姿勢になりがちなデザインの世界に、挑戦的で新しい視点をもたらしたいと、既成の概念を打ち砕いた中銀カプセルタワービルに重ねて「カプセル」を立ち上げた。
展示では、カプセルと志を同じくする先進的な考えのメーカーとデザイナーのプロダクトが発表された。なかでもアルミニウムを素材にしたプロダクトが多かった。世界最大規模のアルミニウムメーカーであるノルウェーのハイドロ社はリサイクルアルミニウムを100%使用した家具や照明器具を発表した。デザインを手がけたのはインガ・センペや、マックス・ラム、フィリップ・マルインといった世界的なデザイナー。 アルミニウムというと、家の窓枠サッシや、清涼飲料水の缶の素材を思い浮かべるが、実は優れた特質を持つ。軽量で、リサイクルがほぼ永遠に可能。加えてリサイクル時に要する電力はバージンアルミニウムの製造時に必要な電力の5%ほどですむ。さらに耐摩耗性にも優れている。世界で唯一、工業製品レベルで100%再生アルミニウムを用いることが可能なハイドロ社とデザイナーとの協働は、今後、家具やプロダクトとしてのアルミニウムの用途の可能性を広げるに違いない。