どうなる「103万円の壁」 福島県民も注目 第2次石破内閣発足 働き手確保収入アップ 労使環境改善に期待
11日に発足した第2次石破内閣が少数与党となり、年収が103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」撤廃に向けた議論の行方に注目が集まる。労働力不足が指摘される中、年末の働き控えに直面してきた使用者、収入増を目指すパート従業員らは近い将来の改正に期待する。野党の発言力が強まり他の政策も変化する可能性があり、県民は暮らしが前に進む政治を願う。 「働く環境が改善されれば子育ての充実につながる」。小野町にある「おのまち認定こども園」の副園長沢井玲子さん(63)は、労使双方に望ましい環境になるよう求める。 2022(令和4)年に開園した。現在は就学前の子どもたち約140人が在籍し、40人ほどのスタッフで運営している。家族の扶養内で働きたいと希望する職員がいる場合、「壁」を超えないように勤務時間や出勤日を少なくして対応してきた。「103万円の壁」がなくなれば「資格を持ちながら働けていない人たちにもチャンスが広がるかもしれない」と期待する。
「壁」をなくした場合、税収が大幅に減る。野党・国民民主党の主張通りに非課税枠を178万円へ引き上げた場合、国と地方の年間の税収が約7兆6千億円減ると試算されている。沢井さんは「別な部分にしわ寄せがくるのは控えてほしい」と注文をつけた。 現状の制度では、パートに加え、働き控えをしているアルバイトの学生もいる。会津大3年の小林佑輔さん(21)は「思う存分に働ければ学生生活の選択の幅が広がる」と受け止める。夏や冬を中心に、稼ぐお金を調整しやすい短期のアルバイトに励んでいる。収入は1年間で30~40万円ほど。サークルの活動費や大学の課外費などに充てている。「友人からは働き控えの声もよく聞く。大学4年間を有意義に過ごすためにも気兼ねなく働ける仕組みが必要だ」と語る。 所得税に関わる「103万円の壁」に加え、社会保険料の支払いが発生する「106万円の壁」「130万円の壁」も就業を抑える一因と指摘される。福島市の通信制高校で講師を務める男性(65)は、衆院で与党が過半数割れしたことで、政策課題を巡る与野党の議論が活発になると予想している。最低賃金が年々上がっているのを背景に「106万円の壁」の撤廃が検討され始めており、男性は「賃金用件を問わず、厚生年金に入れる制度設計と厚生年金適用事業所の拡大を進めてほしい」と訴えた。
■「超党派で復興予算確保を」 避難者 国会運営の重要ポストの衆院予算委員長を野党が担う中、東京電力福島第1原発事故で避難を続ける県民からは、超党派で復興予算を確保するよう求める声が上がっている。 予算委は首相を含む全閣僚が出席し、被災地再生をはじめ国政全般の課題を扱う。2025(令和7)年度で終わる第2期復興・創生期間後の予算をどう確保するかが課題になっており、予算委での議論が重要になる。原発事故で双葉町からいわき市に避難している木幡智清さん(83)は、「帰還や廃炉の完了には多くの時間と予算が必要。与野党の隔たりなく、しっかりと確保してほしい」と注文した。