大盤振る舞いはこれっきりに 理想も現実も軽視した定額減税 経済ヨコからナナメから
これはよろしくない、と言わんばかりに「公平・中立・簡素」を強く主張してきたのは、首相の諮問機関である政府税制調査会だ。有識者で構成し、中長期的な視点から税制のあるべき姿を示してきた。
ただし、その昔、自民党税調の大物は、政府税調について「軽視しない」と断ったうえで「無視する」と続けたとされる。アメリカ独立戦争のスローガン「代表なくして課税なし」を裏返せば、税制を決めるのは学者ではなく、国民を代表する政治家なのだ。
その総本山である党税調は、時の首相より権威があるともされた。しかし、第一次安倍晋三政権から首相官邸主導の態勢が整うにつれ、影響力は低下。流れを引き継いだ岸田首相が主導して打ち出した定額減税は、政府税調の掲げる理想からも党税調の現実路線からもほど遠い。かといって画期をなすような内容でもない。
にもかかわらず与党内では、来年度以降も定額減税を実施すべきとの声が上がっている。否定的な意見もあるが、調整の末「中間でいこう」などと生ぬるく決着するのは避けるべきだ。国の根幹である税制を軽視したあしき前例を作ることになる。