大阪都構想とも政令指定都市とも違う 横浜市など提唱の「特別自治市」とは
5月17日に大阪市で「大阪都構想」の是非を問う住民投票が実施され、“否決”となりました。大阪都構想は政令指定都市を廃止し、5つの特別区に再編成するというものでした。実は、大阪で都構想議論が交わされていた真っ最中の5月12日、京都市で政令指定都市の市長が一堂に介して大都市制度の在り方を議論する会議「指定都市サミット」が開催されていました。この時、参加した多くの市長からは、「特別自治市」の実現を要望する声が相次いだのです。この特別自治市とは何なのでしょうか? 【写真】大阪都構想は消えても政令都市の「二重行政」は消えない
都道府県と同格の権限を持つ「市」
「特別自治市とは、都道府県と同格の権限を有する市のことです。特別自治市は最近になっていきなり出てきた話ではありません。戦前期より、東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸の6大都市は、府県の権限を移譲するように求めていました。これが、最近になって議論されている特別自治市の原形です」(指定都市市長会事務局) しかし、時の政府は特別市の要求を受け入れませんでした。1943年、東京市は東京府に統合させられて東京都が発足。6大都市は5大都市になりました。再び特別市の機運が高まるのは、1947年に現行憲法下で地方自治法が制定されたときです。大都市制度の一つとして“特別市”の規定が盛り込まれました。ところが、それでも特別市は実現しなかったのです。 「特別市は1956年に政令指定都市と名前を変えて実現しました。しかし、政令指定都市と特別市とでは有する権限がまったく異なります。地方分権が進む今、50年前に規定された特別市を実現しようという動きが強まり、“特別自治市”という形で再提起されるようになったのです」(同会事務局) 特別自治市は政令指定都市よりも権限を拡大した自治体ということになります。現在、全国には約1700の市町村があります。そのうち市は790(2015年6月1日現在)です。市には政令指定都市が20、中核市が45、特例市が39(法改正により2015年4月1日から5年間は施行時特例市)、一般市が686あり、それぞれ有する権限が異なります。 政令指定都市は社会福祉や保健衛生、都市開発などにおける権限を府県から移譲されています。本来、市町村は中央省庁との交渉を道府県の窓口を介して行っています。ところが政令指定都市は道府県を飛び越え、中央省庁と直接交渉することが可能です。直接交渉ができることで、市の実情を的確に伝え、政策を反映させやすいというメリットがあります。