池上季実子、今も抱える新型コロナの後遺症。映画の撮影は酸素ボンベ持参、初ミュージカルも控え…「いただいた命なんだから何でもやるのよ」
無理をしすぎるのが悪い癖
2022年の12月には、日本橋・三越劇場で舞台『25Magic』に出演。池上さんは、まだ酸素ボンベが必要な状態だったという。 ――担当医の先生も舞台を見に行かれていたそうですね。 「先生が呆れちゃってね(笑)。『あんなに動いているなんて信じられない。(舞台)袖から出てきて客席に1回降りて、また客席からステージに階段を上がって、そのあとずっとしゃべっている。この状態で信じられない。奇跡だ』って。 それで、『ここまで肺が傷むとなかなか正常には戻らないものだけど、池上さんにとって舞台はリハビリなんだと思いますから、あまり無理をしないように気をつけて頑張ってください』って言ってくださいました」 ――カナダロケの事故のときもですけど、痛みなどに我慢強いですね。 「だからいけないんですよね。倒れるまでやっちゃうから、リハビリの先生にも叱られたんですよ。『休みましょう』と言われても、私は『先生、どうせならあそこの柱までやりましょう。もうすぐそこだから』って言ってしまう。 先生は酸素の数値などを見ながらやっているので、『池上さんは、それで頑張っちゃうからいけないんですよ。血中酸素が低い状態で無理をすると心臓に負担がかかる。今はまだいいけど、70過ぎて心不全になりますよ。だから頑張りすぎるのはやめてください』って言われたので、『わかりました』みたいな感じで。でも、やっぱり癖なんですよね。 先生が毎日リハビリをしてくださり、座ったまま軽く足を上げたり、手を上げたり…酸素飽和度が下がったら96以上になるのを待って、またやって。最初は1、2回やっただけで90を切っちゃって。要するに足をちょっと上げるだけで、いかに人間の体が酸素を使っているかということなんですよね。知らないで体に負担をかけているんです。 それで次は棒を持って…ってやってみると、最初は98なんだけど、3回くらいでガクッと下がる。だから、これが10回できるようになったらって、様子を見ながらやっていったんですけど、ここが一番苦しかった。 『肝硬変は肝臓が固くなるんですけど、コロナは肺硬変だと思ってください』って。肺が硬くなってしまうから酸素が吸えなくなる。組織的に肺がダメージを受けるんですけど、肺自体も肺の周りの筋肉、外側の筋肉も硬くなってしまう。 だから、腕を上げたりして運動することで、硬くなった筋肉をほぐしていく。大変だけど、ゴルフとか、手を上げる運動はいいみたいです。 私がコロナで最初にECMO(体外式膜型人工肺)って言われたとき、仰向けになると肺に負担がかかるからって、うつ伏せにされたんです。うつ伏せになると横隔膜が浮くから肺にいいんだと言われましたけど、ECMOは下手をすれば声帯も切られてしまうことがあるのでやめてもらいました」 2022年は、新型コロナで苦しんでいる最中、両親が相次いで亡くなるという悲しい出来事も重なったという。 「2020年の3月に新型コロナウイルスが流行してすべてが大きく変わりました。2018年に独立してエージェントスタイルにして、理想の形になってきたところだったんですよね。 6月に『八つ墓村』の双子のおばあちゃん、4月が『寺田屋お登勢』、坂本龍馬の寺田屋のお登勢、色っぽい役、そして7月、8月がマクベス夫人…全部違うところから入ってきた話で、その間にこの映画の撮影が入る予定でした。それがこれからというときにコロナで全部ダメになってしまって…ショックでした。 今、またようやくという感じで、今年は11月から来年1月までミュージカルに初挑戦します。初ミュージカル。最初に青森、その後東京、そして地方公演です」 ――池上さんのミュージカル、楽しみですね。 「ワクワクしています。コロナでは先生に『今夜が峠です』って二度も言われて、お花畑も見てきましたからね。もうダメだと思いました。何かやり残したことがあるから、今はまだ来ちゃダメだって言われたんだなって。カナダでの事故のときもそうですけど、普通は死ぬでしょう? カナダでもう死んでいるはずなんです。 命が助かったのは、娘をちゃんと育てなきゃいけないというのがあったんだなと思うんです。今はその娘も結婚したし、役目は終わったと思ったのに生かしていただいたのだから、やってないことをやるしかないよなって。基本何でも受けるぞみたいな感じです(笑)。 この間も一緒にやった子たちがみんな『季実子さん、小劇場にも出るんですか?』って不思議がっていたんですけど、『私はいただいた命なんだから何でもやるのよ』って言ったの。だいたいにして、小劇場だからとか大劇場だからって分けるのもナンセンスだし、芝居なんだから、小も大もないだろうって思う。 人が何をどう言おうが関係ない。自分は芝居がしたいのだから、芝居にいいも悪いもないって。悪い状況だったら、いい状況に持っていくようにするのが自分の仕事だからって思っています」 ――今現在の体調はいかがですか? 「今でも天候や気圧の関係など咳が出ることはありますから、完全に健康というわけではないです。でも、コロナじゃなくてもある程度年齢を重ねると、どこかしら具合の悪いところもありますしね。だから、体をケアしながらいろいろなことにチャレンジしていこうと思っています」 池上さんに会ったのは25、6年ぶりだが、妖艶な美貌は変わらず、新たなチャレンジに目を輝かせる。初ミュージカルも今から楽しみだ。(津島令子) メイク:大野志穂 スタイリスト:森本美砂子
【関連記事】
- 【インタビュー中編】池上季実子、女優としての絶頂期に経験した大事故。馬車から空中に投げ出され…石畳に全身を強打「ずっと後遺症に苦しめられて」
- 【インタビュー前編】池上季実子、厳しかった父に黙って女優デビュー。大ブレイクした『愛と誠』決定後には初めての反抗「私はこれをやるの!やりたいの!」
- 女優・高樹澪、40歳を境に体調に異変「本当に死の淵を見た」 痙攣、睡眠不足、離婚問題…「私の中で何かが壊れた」
- 古村比呂、海外ロケ前日に発覚した“がんの疑い”。お風呂で涙…シングルマザーとして「どうなっちゃうんだろう」
- 加賀まりこ、18年に及ぶ事実婚「彼のことがずっと好きだった」。自閉症の息子に伝えたい「ありがとう」