「犯罪の加担者」「無能なバカ」 マスク氏が欧州首脳を口撃
X(ツイッター)オーナーの米実業家で、右派的な言動で知られるイーロン・マスク氏が、政治的信条を異にするスターマー英首相らへの露骨な批判を続けている。マスク氏はトランプ次期米政権で政府外助言機関「政府効率化省」を率いる予定で、米欧関係への影響も懸念されている。 「スターマーは辞任しなければならない」。マスク氏は3日、Xへの投稿でそう訴えた。その理由としてマスク氏は、スターマー氏が検察官時代、パキスタン系容疑者らによる白人少女らへの性的暴行事件を十分に捜査しなかったと主張した。そのうえで、「英国史上最悪の集団犯罪に加担した罪で告発されなければならない」と続けた。 マスク氏はこのほか、スターマー政権の別の高官も「刑務所に入るべきだ」などと攻撃している。 英紙フィナンシャル・タイムズは9日、マスク氏の狙いはスターマー氏が率いる中道左派・労働党の弱体化で、自らが支持する右派ポピュリスト政党「リフォームUK」の勢力拡大を画策していると伝えた。 英メディアによると、一連の攻撃に対しスターマー氏は6日、マスク氏を名指しせずに「虚偽情報を拡散する人々は、被害者に関心があるのではなく、自分たちが目立ちたいだけだ」と指摘した。そのうえで、自身は検察官時代、性的暴行容疑者の起訴に真正面から取り組んだと反論し、「この手口は何度も見てきた。彼らは脅威をあおり立て、メディアがそれを増幅させることを期待しているのだ」と述べた。 マスク氏の矛先は、2月に総選挙を控えるドイツにも向かう。マスク氏は昨年12月、Xへの投稿で中道左派・社会民主党のショルツ首相を「辞任すべきだ。無能なバカだ」と非難した。マスク氏は、排外主義的な右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)がドイツを救うと訴えている。 これに対しショルツ氏は「冷静でいよう。あおり行為に乗ってはいけない」と述べ、挑発を無視する意向を示している。 欧州首脳からは、「大きな影響力を持つ人物が、他国の内政にこれほど関与することを憂慮する」(ノルウェーのストーレ首相)といった声が上がっている。 一方、イタリアの右派連立政権を率いる極右出身のメローニ首相は、マスク氏は「言論の自由を行使しただけだ」と述べ、左派への攻撃を事実上擁護している。【ロンドン篠田航一】