9歳で失った右足「自由な移動」を夢見て華人起業家が開発した「ロボット義足」 ものづくりとイノベーション、日中の強みを融合
義足の世界は既存の大手企業の寡占状態にあり、競争が生まれず進化していないという。今後は米国への進出も見据えており「次世代技術で多くの人のモビリティーを向上させる。電気自動車(EV)で世界を変えたテスラのように、義足に対する人々の考え方も変革したい」と決意を語った。 ▽「いけてる」ビジネスモデルを中国から輸入 エレベーターの閉じられた扉に、プロジェクターを使って広告やニュースを映し出す。こうしたデジタルサイネージ事業を「株式会社東京」(東京)の羅悠鴻社長(29)が始めた。 羅さんは生まれ育ちは日本だが両親が中国出身。東大の大学院で地球惑星科学を学び、将来は土星の衛星で地球外生命体の探査がしたいと夢を描いていた。 だが、予算的に国家プロジェクトでも困難な事業だと考えていた。ちょうどその頃、米国の起業家イーロン・マスク氏の宇宙開発への挑戦を知る。「もしかしたら自分で稼ぐ方が実現の確率が高いかもしれない」。こう考え、研究者ではなく起業家に転身した。
事業のアイデアは東大のエレベーターに乗った際、貼られていた張り紙を見てふと思いついた。「何げない張り紙も、手持ち無沙汰になりがちなエレベーターの中だとつい目に留まる」。そう感じて類似の事業について調べてみると、中国では起業から10年あまりで時価総額が数兆円に達する会社があり、将来性が高いことが分かった。「どの分野にどれだけ先行投資するかなど、中国の先行事例はとても勉強になった」という。 サイネージ事業は現在、東京都内のオフィスビルなど約2000カ所に展開するまでに成長した。使用するプロジェクターは耐熱や静音性能などで高いレベルが求められることから、広東省深圳市の会社と特注品を共同で開発している。「日本では何年もかかるような研究開発を、中国なら短期間でより安くできる。中国のリソース(資源)をとことん利用できるのが華人起業家の強みだ」と語る。 中国では巨大IT企業がスタートアップに積極的に投資し、起業と成長が好循環してきた。今後はサイネージ事業にとどまらず、「中国のいけてるビジネスモデルをどんどん輸入したい」と羅社長。「中国の事業モデルは熾烈な競争にさらされ洗練されている。かつての日本の遣唐使がそうだったように、中国の進んでいる部分を積極的にまねして取り入れていくべきだ」と力を込めた。