ブラッド・ピットらのカメオ出演、“第四の壁”突破…やりたい放題の“俺ちゃん”の暴走をプレーバック<デッドプール>
デッドプールとウルヴァリンの“2大個性派ヒーロー”が共演するアクションエンターテインメント映画「デッドプール&ウルヴァリン」が7月24日に世界最速で公開された。デッドプールもウルヴァリンも個性的過ぎるというか、破天荒なヒーローで、この2人が一緒になったら“危険さ”はもちろん、“面白さ”も2倍どころじゃなく100倍くらいになっていそうだ。全米に先駆けて日本で世界最速公開されると初日の観客動員数は13万2870人、興行収入は1億9453万7580円を記録。この数字は、「デッドプール」シリーズ2作を超えるもので、2024年公開の洋画No.1のロケットスタートを決めたということで、あらためて“デッドプール”の魅力を検証してみたい。(以下、過去作のネタバレを含みます) 【写真】やっぱりカッコイイ…!美しい容姿を失う前のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ) ■主演のライアン・レイノルズが“イケメンを封印” 2016年に映画第1弾「デッドプール」、2018年に第2弾「デッドプール2」が公開された。デッドプールを演じるのは、「あなたは私の婿になる」(2009年)、「グリーン・ランタン」(2011年)などで主演を務めたイケメン俳優ライアン・レイノルズ。主人公の“デッドプール”とは、アメリカ・ニューヨークでトラブルシューターをしながら生活している元特殊部隊員の傭兵ウェイド・ウィルソンのこと。 ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)という恋人ができて、1年ほどの交際期間を経て婚約にたどり着くが、ウェイドは末期ガンであることが分かり、まさに気分は天国から地獄へ。ある男に「ガンが治せる」と聞かされ、連れて行かれた施設で治療に臨んだが、それは“ウェポンXプログラム”という人体実験だった。余命わずかな人をミュータント化して戦闘マシンとして売り払うというもの。ウェイドも実験によって改造が行われたが、それは強烈な痛みも伴った。この世に存在するありとあらゆる拷問を試されている、と言えば恐怖が伝わるか。 そのプログラムのリーダー・エイジャックス(エド・スクライン)もミュータントで、彼の場合、超人的な反射神経と“無痛無感覚”の体を持っている。人をいたぶるのが大好きで、ウェイドも散々いたぶられた後にミュータントになったが、クリーニングのタグからエイジャックスの名前が“フランシス”だと知ったウェイドに名前をからかわれたことを根に持ち、さらなる拷問という名の実験を続行した。ウェイドは体が改造されたことで癌細胞が消滅。驚異的な“治癒能力”を手に入れた。しかし、その代償として顔を含めた全身が焼け爛れたようになってしまい、元の顔に戻せるのはフランシス、いやエイジャックスだけということで、逃げたエイジャックスを追跡し始める。 ■グロテスクな描写やコミカルなシーンもたっぷり 映画第1作の序盤から大立ち回りを見せ、拳銃や刀を使って、敵を躊躇(ちゅうちょ)せずに倒していくウェイド。切られたり、撃たれたりする描写がリアルというか、グロテスクな表現にもなっていて、見てるだけでも痛みが感じられるような気がするほど。驚異的な治癒能力があるということで、時には自分の腕を切り落とすなんてシーンもあるが、切り落とされた手をくっつけて再生するのかと思ったら、そうではなく新しく生えてくる感じの再生だった。なので、腕を切断したら赤ちゃんの手みたいな小さい手から少しずつ成長していく。「2」で胴体が真っ二つになったりしたが、そのときは上半身は大人のまま、下半身は子どもというアンバランスな体になっていた。木っ端微塵に近い状態でも再生するので、“不死身”と言ってもいいだろう。 デッドプールは、他のX-MENたちのような悲哀を漂わせながら戦ったり、アベンジャーズのように平和のために戦ったりするのではない。戦うのは、自分の顔を元に戻すためだとか、愛するヴァネッサのためとか、超個人的なこと。「スーパーだけどヒーローじゃない」と劇中で本人が言ってる通り、正統派ヒーローというわけではない。 ちなみに、“デッドプール”という名前は、行きつけのバーに傭兵が集まっているため、“次に誰が死ぬか”の賭けが行われていて、ウェイドもその対象になっていたが不死身となったため“デッドプール(死の賭け金)”という意味の名前を命名した。 ■“第四の壁”も余裕で突破 デッドプールが他のスーパーヒーローと違うところは他にもある。それはものすごくおしゃべりなところ。しかも口が悪く、下ネタもバンバン飛び出す始末。そして、“第四の壁”を破るのも大きな特徴。第四の壁は元々演劇用語で、舞台上に存在する左右の壁と奥の壁に対して、観客側の見えない壁を“第四の壁”と呼ばれている。つまり、物語の世界と現実の世界を隔てている壁を壊して、観客に語り掛けること。 自分のことを“俺ちゃん”と呼びながら、ちょいちょい観客に語り掛けてくるデッドプール。普通だったらナレーションで行うような状況説明も、ユーモアやジョークを交えて自分で行ってしまうので、そういう部分が親近感を与えてくれているのだろう。そういえば、マーベルで言えばシー・ハルク(マーベルドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」)も第四の壁を破っていて、独特の世界観を作り出していた。 どのスーパーヒーローにも似ていないのがデッドプールの大きな魅力。「こんなことまでやるの!?」とビックリさせられることも多いが、それでも憎めないのは、そのしゃべり方だったり、キャラの良さから来るものだろう。 ■ブラピもM・デイモンもしれっと出演 ちなみに、「デッドプール2」にはブラッド・ピット、マット・デイモンという大物俳優がほんの一瞬カメオ出演しているのはご存知だろうか? これだけのスターを気付くか気付かないか絶妙なラインでしれっと登場させているのも、破天荒な今作の魅力だろう。特にデイモンのほうは特殊メイクでほぼ見つけられない気もするが、探してみてほしい。 ウルヴァリンも「デッドプール2」の最後にチラッと登場していた。そしてデッドプールとウルヴァリンがガッツリ共演する「デッドプール&ウルヴァリン」でもネタバレ回避で明言を避けるが、とんでもないことがたっぷり起こっている。 「デッドプール&ウルヴァリン」は全国公開中。「デッドプール」過去作はディズニープラスで見放題独占配信中。 ◆文=田中隆信