軽い切り傷は費用徴収 不要救急搬送で茨城県指針案
緊急性のない救急搬送患者から「選定療養費」を徴収する茨城県主導の取り組みで、緊急性を評価する具体的な指針の素案が10日、複数の関係者への取材で分かった。素案では軽度の切り傷や擦り傷は「明らかに認められない」とした。茨城県は12月からの運用を目指し、11日に開く県議会保健福祉医療委員会で報告する。 関係者によると、素案で緊急性が「基本的に認められない」とする症状は10例程度。風邪症状のほか、微熱(37.4度以下)▽打撲▽慢性的または数日前からの歯痛▽便秘▽何となく体調が悪いといった不定愁訴▽眠れない-などで、それぞれ単独の症状のみのケースが該当する。別の疾患の兆候の可能性から、評価が難しい場合は、緊急性を認めても「差し支えない」とした。 一方、緊急性が認められる具体例として、15歳未満と以上に区分した上でそれぞれ20例程度を提示した。15歳未満は「15秒以上の無呼吸がある」「全身が青くなっている」など、15歳以上は「ろれつが回りにくく、うまく話せない」「突然の顔や手足のしびれ」などを挙げる。 緊急性の有無は救急要請時にさかのぼって医師が判断する。具体例のような症状があれば、搬送後に症状が改善していても緊急性は認められる。 徴収開始は休日明けの12月2日午前8時半からの計画。徴収額は病院で異なり、1100~1万3200円となる。 選定療養費は、一般病床数が200床以上の大病院を紹介状なしで受診した場合にかかる追加費用。不要不急の救急搬送の患者から徴収する今回の取り組みは、県内大病院の約9割が参加意向を示している。県は関連病院や県医師会と指針内容について協議を進めてきた。今後は同委への報告を経て、今月上旬に指針をまとめ、同下旬までに県民への広報を始めたい考え。 県内の昨年1年間の救急搬送件数は、過去最多の約14万3千件。うち6割以上が大病院に集中し、約半数は軽症患者が占め、中には緊急性が低いケースもあるという。
茨城新聞社