カーブで光るトヨタ・セリカ ワンランク上のマツダMX-6 ホットハッチ的なローバー220 クーペ 1990年代の煌き(2)
完成度や高級感で優れるMX-6
対してマツダMX-6には、ワンランク上の成熟感が香る。ひと回り大きく、有機的なボディへ調和するように。 サスペンションのスプリングは適度にソフトで、路面の不整を巧みに均しつつ、不安定に揺れるわけでもない。高さを抑えたV6エンジンに加えて、ルーフラインも低く、低重心は明らか。コーナリングには落ち着きがある。 快適な乗り心地に2.5LのV6エンジン、ひと回り大きいボディを組み合わせ、マツダはMX-6を低価格なグランドツアラーとして欧州市場で訴求した。セリカや220 クーペのような、スポーツクーペではなく。 完成度も秀でている。ダッシュ力は220 クーペに並ばず、ステアリングの正確性はセリカへ迫るほどではないが、シャシーはドライバーへ自信を抱かせる。目的地への移動時間の短さでは3台の1番でなくても、ハイペースを安楽に保って急げる。 インテリアも、間違いなく高級側にある。プラスティック製部品の仕上げは当時の日本車的だが、製造品質は優れ、クラス上の雰囲気が全体に漂う。走行時のロードノイズも小さい。ウインドウの位置が低く、運転席からの視界も広い。
1990年代のイメージを牽引した前輪駆動クーペ
30年前のクラシックとなった今では、人気で台数の多く売れた6代目セリカが、英国ではお買い得なクーペになった。感情的な刺激は少し薄いかもしれないが、信頼性と実用性は間違いなく高い。 220 ターボは、ちょっとやんちゃなローバー。洗練度はブランドのイメージに達していなくても、交通量の少ない公道での運転はすこぶる楽しい。 それぞれに魅力はあるものの、今の筆者が最も強く共感したのは、MX-6だ。滑らかな2.5L V6エンジンに、時代を先取りしたようなスタイリング、上質なシャシーが組み合わさり、頭ひとつ抜けたような印象を受ける。 1990年代のマツダのイメージを牽引したのは、その頃のMX-5(ロードスター)やRX-7、323F(ファミリア)だけではない。前輪駆動クーペのクラストップ、MX-6もしっかりその一翼を担っていたに違いない。 協力:7スター・カーセールス社、ローバー・クーペ・オーナーズクラブ、ポール・チャールズワース氏、ケビン・ウィリス氏