<下野紘×佐藤拓也>「私の繭期」 鬱屈とした時期を経て 今は? アニメ「デリコズ・ナーサリー」対談
佐藤さん 飲み方に「きれい」「汚い」があるんですね(笑い)。
下野さん 28、29歳くらいじゃないかな。その頃が一番、精神的にちょっと荒れていたかもしれない。特に仕事関連で「自分の思った通りにできないな」と感じていたし、オーディションでも「あの役に受かりたかった」とか「あの人が受かって」という嫉妬心があって。そういうのが一番バリバリあったのが、20代後半だったと思います。
◇他者との比較からの解放 「俺はまだ本気出してないだろう」
--下野さんは、その“繭期”からはいつ抜け出せたのですか。
下野さん 30代前半から徐々に、という感じでした。
佐藤さん 僕も、仕事を始めた頃は鬱屈としていたかもしれませんね。下野さんがおっしゃったみたいに、オーディションで落ちた・受かったという、自分と他者との比較みたいな気持ちは、20代の頃は強かった気がします。「自分はなぜもっとできないのだろう」と思っていて。ただ、下野さんと同じで、30歳過ぎて徐々に、自分と他者を比較することにエネルギーを傾けるのが面倒になってきちゃって。例えば、僕はAさんになれないし、Aさんは僕になれないしなと。オーディションに落ちた・受かったは、一生続くことだし、それなら目の前のこと、自分にできることを一生懸命頑張ればいいのかなと、ある種、ラクになれたというか。
下野さん 30代、40代になると、やりたいこともどんどん増えていくよね。自分にやれることも増えるし、周りからの「こういうことをやってほしい」というのも増えてくる。そんな中で、他人と比較する必要性なんかないと気付く。結局、自分との戦いでしかないから。
佐藤さん まさにそうです。
下野さん それなのに、どうしても羨ましがっていたんだろう?と。幼かったと言えば、幼かったのかな。ちなみに、佐藤くんは今いくつだっけ?
佐藤さん 40歳になりました。
下野さん 40代、すっごく楽しいよ。30代の時に、自分の中で「これは大切にしておかなきゃ」と思っていたものが、「ゴミだよ、こんなの」という感覚になる(笑い)。それに「これ、俺には無理だよな」と思っていたことも、「あ、この扉は開けられますね」となる。20代、30代は、ベルトコンベヤーに乗って流されないように一生懸命走らなきゃという気持ちだったんだけど、40代になってからは「流されてみるか」「まあ、いっか」と。