中国から出られない外国人が急増 米国人だけで100人 習政権が発明「巨大な鳥かご」◇ノンフィクション作家 譚璐美
中国人は数十万人が旅券没収
中国公民の場合はより深刻だ。スペインの中国人権擁護団体「セーフガード・ディフェンダース」の報告(23年12月)によれば、パスポートを没収され、出国禁止の対象になっている人は推定で数十万人に上る。中央官僚、地方公務員、大学教授、弁護士、医師、記者、芸術家、企業家らである。 理由は明らかにされていないが、汚職犯の国外逃亡や、資産の海外持ち出し、政治亡命が疑われたり、国外で対中批判や人権擁護活動を行う恐れがあると判断されたりした人々のようだ。
娘の葬儀にも参列できず
人権派弁護士だった唐吉田さんもその1人だ。日本の日本語学校に留学中の娘、唐正琪さんが19年、病に倒れ意識不明の重体になったため、21年6月に日本へ渡航して娘に会おうとした。ところが、「国家の安全」などを理由に出国を禁止され、その後拘束された。 唐吉田さんは23年1月に保釈された後も、厳重な監視下に置かれた。24年春、唐正琪さんは日本で亡くなったが、父親は告別式にも参列できなかった。なんと無慈悲でひどい仕打ちではないか。 21世紀の習近平政権は、中国を「巨大な鳥かご」に仕立て、誰も逃げられない新たな刑罰を発明したのである。