身寄りなくても高齢者に安心を/入院・施設利用時の身元保証や死後事務 弘前市が支援検討
身寄りがない高齢者の身元保証人の確保や死後対応が全国的に課題となる中、青森県弘前市は2026年度にも、身元保証や死後事務の支援を行う体制を整備する方向で検討している。制度のはざまに置かれ、地域の医療・福祉などのサービスを利用できずにいる1人暮らしの高齢者が安心して暮らせるようにサポートする試み。国のモデル事業を活用する。 少子高齢化や核家族化によって身寄りのない高齢者が全国的に増加。介護施設に入居できなかったり、医療機関に入院できないケースが目立っている。死後、遺体の引き取り手がいないため、対応に苦慮する自治体や福祉関係者が多い。 これらの現状を受け市は、「成年後見制度」の利用対象とならない、身寄りのない高齢者をサポートする事業を検討してきた。 事業実施年度は確定していないが、25年度に現場のニーズなどを再確認し、26年度から総合的な支援パッケージを提供することを目指している。今月下旬、具体的な事業内容を発表する。 事業実施に当たり、市が活用を検討しているのが国の「持続可能な権利擁護支援モデル事業」。国の資料では、事例として、身寄りのない高齢者の支援プランを作成したり、プランに基づく支援を調整したりする取り組みが記載されている。また、入院・施設入居時の身元保証を代替する支援事業のほか、病院などの費用の精算代行、遺体の確認・引き取り、葬儀・納骨・法要の支援なども想定している。 市によると、国のモデル事業を活用しているのは、長野市、愛知県豊田市など。県内での実施自治体は確認していない。 10月8日に弘前市役所で開かれた弘前圏域権利擁護支援連絡会で、市は、医療・福祉関係者らにスケジュール案などを示し、関係者からは、新しい取り組みに期待する声が出された。 福祉分野に詳しい専門家は東奥日報の取材に「1人暮らしの高齢者の入院や施設入居の難しさが問題となっている中、具体的な支援体制をつくるのは大切。制度や法律のはざまにいて、支援体制からこぼれ落ちそうな人を救うセーフティーネットの一つになるのではないか」と話した。