アップル生成AI ChatGPTも取り込む「開かれたAIプラットフォーム」になれるか
セキュアなオンデバイスとクラウドのAI処理を併用
■セキュアなオンデバイスとクラウドのAI処理を併用 生成AIによる処理は基本的にデバイス上で、インターネットに接続しなくても完結するように設計されている。ユーザーのプライバシーを安全に護るためにも有効な仕組みだ。タスクの内容、負荷の重さによっては大規模なサーバベースのモデルである「Private Cloud Compute」も併用する。 Appleシリコン搭載のセキュアなサーバ上で実行されるクラウドコンピューティングは、サードパーティのアプリも含めて実行されるコードを独立したエキスパートが入念に調査して、ユーザーのプライバシーを安全に護ることのできるサービスのみに開放される。デバイスとサーバーの間の通信も高度に暗号化される。 オンデバイスとオンラインの分担比率は、処理の内容に応じて都度ダイナミックにスケールする。 例えばテキストプロンプトから絵文字を生成する「Genmoji」、テキストプロンプトからのキーワード入力と好みの「スタイル」を選んで画像をつくる「Image Playground」などはオンデバイス処理だが、Siri、またはテキストの修正・校正を扱う「Writing Tool(記述ツール)」のような機能については、重くなる負担をPrivate Cloud Computeに分散させる。どちらのAIモデルで処理を行う場合も、ユーザーにはシームレスで安全な使い勝手を保証する。 ■外部生成AIとの「柔軟な連携」にも対応 アップルは、他社が開発するAIモデルをアダプタのようなサブモジュールとしてApple Intelligenceに追加して、より専門的な処理を幅広く扱えるカスタマイズ性に富んだアーキテクチャを採用した。 その一例がOpenAIのChat GPTとの連携だ。
成功の鍵を握るチューニングの自由度
例えばSiriでは、ChatGPTによる豊富な学習データを活かした検索が行える。Siriに複雑な内容の質問を投げかけると、デバイスの画面にはChatGPTの使用をユーザーに訊ねるポップアップが立ち上がる。ユーザーがこれを許可すると、ChatGPTが質問への応答をテキストで返したり、PDFファイルの要約や画像生成なども行う。ユーザーはChatGPTを使わずに、同じ質問の答えをSiriに聞くこともできる。ChatGPTはOSの設定から使用のオン・オフが選べるオプションになる。 アップルは来年にかけて、英語以外の言語とプラットフォームへの対応を進めるとしている。例えばApple Intelligenceに「日本語による処理に強いAIモデル」を連携させることによって、かなり自然な日本語対応が早期に実現できる期待が膨らむ。 言語への対応だけでなく、Apple Intelligenceを世界各国・地域のユーザーが快適に使えるように、アップルはそれぞれの文化にも敬意を払いながら開発を進めるという。Apple Intelligenceと外部AIモデルによる連携は、ユーザーにカルチャーギャップを感じさせないAIを実現するためにも有効な手段だと言える。 ■成功の鍵を握るチューニングの自由度 Apple Intelligenceの画像生成の1つである、iPadOS 18のApple Pencilによる手書きツールパレットに組み込まれる「Image Wand」も魅力的だ。 Image Wandはアップル純正のアプリについてはメモ、Keynote、Pages、フリーボードなどに組み込まれる。ユーザーがApple Pencilで描いたラフスケッチをImage Wandツールで囲むと、わずか数秒で美しいイラストに整える。ドキュメントの空いているスペースにゼロから新しく画像を生成して配置することも可能だ。この機能もベースになるのはアップルの画像生成AIツールであるImage Playgroundだ。