「国産牛乳」苦境 酪農業の倒産・廃業、3年連続で増加 酪農業の4割が「赤字」、飼料価格の高騰が影響
「酪農業」の倒産・休廃業解散動向(2024年1-10月)
食卓に欠かせない「牛乳」の苦境が続いている。食品スーパーや学校給食向けに、牛乳やチーズなどの原料となる生乳生産を行う「酪農業」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)が4件、休廃業・解散(廃業)が12件発生し、10月までに計16件が市場から退出した。23年通年の件数(16件)を超えて3年連続の増加となる見込みで、過去10年で最多を更新するとみられる。 2023年度における酪農業者の業績は「赤字」が約4割を占め、過去20年で最大だった22年度(54.3%)に次いで2番目に高い水準だった。「減益」を含めた「業績悪化」は7割に達した。ロシアのウクライナ侵攻や円安による輸入飼料価格の高騰、電気代、人件費といった急激なコスト高に対し、乳価の引き上げ幅が追い付かず、赤字幅が拡大するといった酪農業者もみられ、厳しい採算状況を強いられた。 なかでも飼料価格は、乾牧草が最も高騰した22年度で20年度比1.6倍、乳用牛の配合飼料も1.4倍まで高騰した。24年度は価格上昇ペースが一服し、緩やかに下落しているものの、依然として高値圏での推移が続いている。 他方、パック牛乳の価格(全国平均)は2024年4-9月平均でも2020年度比1.2倍にとどまるなど、生産コストと販売価格の間で大きなギャップが生じている。高齢化や後継者不足、昨今の設備投資による借入負担が重なり、経営体力が乏しい酪農業者で淘汰が進んだ要因になったとみられる。
消費者も物価高の影響を受け「少しの値上げでも購買量が減る」といった小売店の思惑もあり、牛乳の適正価格形成に向けた道のりは険しい。今後、飼料高騰と値上げ難を前に酪農家が経営をあきらめる状況が続けば、国産牛乳が入手困難となる「酪農危機」が起きる可能性もある。