「この資料じゃ使えない!」「仕事の優先順位がわかってない!」 心ない上司の言葉に新入社員が失意の末に
仕事の優先順位がわかってないな!
また、こんな一幕もありました。 若手社員研修の一環で、職場環境や担当業務について気づいた改善提案をまとめ、上司に提出する宿題が出ました。Aさんは提出期限よりも1週間ほど早めに仕上げ、人事からの指示どおり、上司のもとにメールで送信しました。 ところが、数日が経っても、上司からは何のリアクションもありません。上司のコメントをもらって人事に提出することになっているので、気が気ではありません。 そこで、Aさんは恐る恐る上司のもとへ行き、尋ねました。 「あの...先日メールでお送りした『改善提案』、ご覧頂けましたでしょうか?」(Aさん) すると、思わぬ返事が返ってきたのです。 「何? 黙ってメールだけ送られてきても何ことだか、わからないよ。ちゃんと直接話してくれないとさ。社内の研修のことなんだよね。それより、昨日頼んだ見積書、どうなっている? お客様も待たれていて、急ぎだから早く出してくれないと困るな! 仕事の優先順位がわかってないんじゃないか!」(上司) Aさんは、思わぬ叱責に、さらに暗い気持ちになりました。
次第に体調不良が進み、退職に...
こうした状況が続くうちに、Aさんは次第に体調を崩しがちになりました。 Aさんの休みが重なるようになると、さすがに人事部も気に掛けるようになりました。 上司に対し「あまり無理をさせないように」との注意指示が出ると、上司も表面だって厳しい言葉は控えるようになりました。 「申し訳ありませんが...今日も微熱があって、体に力が入りません。お休みさせて頂けますでしょうか」(Aさん) 「それなら、無理する必要はないよ。つらい時や、できない仕事は、早めに言ってくれれば引き取るから大丈夫だよ」(上司) Aさんは、上司のこうした当たらず触らずの言葉や態度に、かえって冷ややかなものを感じ、疎外感を深めていきました。 そして、次第にメンタル不調が進行し、入社から半年たらずで退職せざるを得なくなったのです。 このエピソードは<心からの「ありがとう」に涙 メンタル不調で退職した若者が「働きがい」を発見した出来事とは>の記事に続きます。 (紹介するエピソードは実際にあったものですが、プライバシー等に配慮し一部変更を加えています。) 【筆者プロフィール】 前川 孝雄(まえかわ・たかお):株式会社FeelWorks代表取締役。青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授。人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業のFeelWorks創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。 近著に、『部下全員が活躍する上司力5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)、『部下を活かすマネジメント「新作法」』(労務行政、2023年9月)、『Z世代の早期離職は上司力で激減できる!』(FeelWorks、2024年4月)など。