愛犬から一番聞きたい言葉は? 『DOG DAYS 君といつまでも』が教えてくれた
愛犬家の監督ならではの視点
ワンダ、スティング、車掌さんが、人間たちを振り回すやりとりを見ていると、思わず笑みがこぼれます。犬たちが時にはしてやったり顔を見せたり、めいっぱい愛情を注がれてご満悦な表情をしたり、一緒にベッドで添い寝したりと、犬好きにとってはたまらない名シーンが盛りだくさんに登場。 キャスト陣や犬たちから非常に豊かなドラマを紡ぎ出したキム・ドクミンにとって本作は、待望の監督デビュー作となりました。監督は「小さな時から周りには犬がいて、楽しい思い出と辛い経験がごちゃ混ぜになっています。犬にまつわる映画を作るチャンスを得たときは本当にうれしかったです」と語っていますが、愛犬家であるからこそ、ただならぬ情熱を持って本作を撮りあげられたのではないかと感じられるのです。 作品内での「飼い犬1500万頭時代」というセリフが物語るように、韓国では全国民の25%が動物と一緒に暮らしていて、その8割近くが犬だそうです。犬との生活が、いかにして私たちの人生を豊かにしてくれるのかを、全編にわたって描きつつ、捨て犬や殺処分問題、犬の病気にまつわる飼い主の葛藤なども、きちんと織り込むという誠実な姿勢が素晴らしい。 中でも「もしも、犬が人間の言葉を話せるとしたら、どんな言葉が聞きたいか?」と尋ねるシーンがとても心に残っています。もちろん、犬の飼い主としては、「愛してる」「好きだよ」と言った言葉がほしいと、通常なら思うはず。でも、ある人の答えは予想のつかないものでした。そこはネタバレ厳禁なので詳しくは言えませんが、おそらく私たちに、ある“気づき”を与えてくれるのではないかと。そのやりとりに、ぜひご注目ください。
それぞれが成長していく“人間&犬ドラマ”
いくつか同時進行していく人間ドラマ、いや“人間&犬ドラマ”が折り重なり、見事なパッチワークが完成している本作。特筆すべきは、犬とともに人間の成長もしっかりと描きこまれている点です。犬はもちろん、人間のキャラクターもあえて年代や環境、価値観の違う登場人物をちりばめることで、それぞれの魅力がくっきりと浮かび上がっていきます。 「誰かを思うということは、自分の欲望や隔たりを捨てることだと思います。『DOG DAYS 君といつまでも』は、それぞれの登場人物がしがみついているものを手放しながら成長していく姿を描いています」という監督の言葉には大いにうなずけます。犬を通して人と交流することで、それぞれが良い方向へと足を進める姿を見ていると、誰かとふれあうことの尊さを再確認させられそう。 また、『DOG DAYS 君といつまでも』というタイトルがよくできていて、特に「君といつまでも」という言葉は、映画を見たあと、余韻たっぷりにかみしめてしまう。本作のテーマを雄弁に物語るJEMINNのテーマ曲「Sky⋆」にある「どこであろうといっしょにいたい」という歌のフレーズもしかり。いろんなメッセージの多重奏を堪能できる良作なので、ぜひ映画館でご覧ください。