チャットボットとの違いは? 自ら顧客対応する“AIエージェント”、セールスフォースが国内投入
セールスフォース・ジャパンは、自律型AIエージェントのスイート製品である「Agentforce」を日本市場にて提供開始する。第1弾として投入されるのが、カスタマーサービス領域の「Agentforce Service Agent」だ。 【もっと写真を見る】
セールスフォース・ジャパンは、2024年10月30日より、自律型AIエージェント(エージェンティックAI)のスイート製品である「Agentforce」を日本市場にて提供開始する。第1弾として投入されるのが、カスタマーサービス領域の「Agentforce Service Agent」だ。 同社のCRM上で提供するこのAIエージェントは、自律的に自然な応対をする“進化したチャットボット”であり、人手不足を解消して、顧客満足度を向上させるという。 セールスフォース・ジャパンの専務執行役員 製品統括本部 統括本部長の三戸篤氏は、第1波の予測型、第2波の対話型アシスタントに続く、AIの第3波が自律型AIエージェントであると説明。「今までの“AIを使う”という世界から、今後は、“AIを雇う、採用する”という世界に変わっていくのではないか。日本のお客様に、この新しい世界を届けたい」と強調した。 Agentforceで目指す「人×AIエージェント×データ×CRM」の世界 これまでの生成AI活用と自律型AIエージェントの違いは、ユースケースが個人から組織に広がることだという。 従来は「この見込み客の情報をサマリして教えて」など、生成AIに依頼をして、個人の仕事を効率化していた。一方のAIエージェントは、「見込み客リストから商談を創出しておきますね」といったように、特定の業務領域で自律的に働いてくれる。 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部のシニアマネージャーである前野秀彰氏は、「これはすなわち、組織の労働力が強化されるということ。個人の生産性を向上させる従来の生成AI活用と位置付けが異なる」と説明する。 しかし、自律型AIエージェントでも「人間のすべての仕事を、完全に代行することはできない」(前野氏)という。そこで、同社がAIエージェントで掲げるコンセプトが「人×AIエージェント×データ×CRM」だ。 同社のCustomer 360の各CRM上で、人とAIエージェントをつなぎ、さらにアクションに必要なデータと連携させる。特定領域でAIエージェントに働いてもらいつつ、CRMを介してスムーズに人にエスカレーションしたり、連携をとれるようにする方向性だ。 このようなコンセプトで、順次日本でも展開される「Agentforce」は、同社のプラットフォームの機能をフル活用することで機能する。Customer 360のプロファイルで、どのような役割を持つエージェントなのかが定義され、ビジネスの情報が集約されたData Cloudからデータを取得して、プロンプトやフロー、Apex、MuleSoftといった仕組みでアクションを起こす。 この一連の流れは、信頼とセキュリティが担保されたプラットフォーム上で実行される。どの範囲まで業務を任せるかを、「ガードレール」で制御できるのもポイントだ。 加えて、自律的な推論や意思決定を実現しているのが「Atlas推論エンジン」だ。ユーザークエリのコンテキストを解釈して関連性を絞り込み、関連性の高いデータを取得して、アクションのための計画を立てる。タスクが完了すると計画を評価して、次に備えて改良する。このサイクルによって、AIエージェントに、人のように応対するための“思考”が与えられる。 カスタマーサポート向けの「Agentforce Service Agent」を日本投入、従来のチャットボットとの違いは? この自律型AIエージェント「Agentforce」の第一弾として、日本市場に投入されるのが、カスタマーサポート向けの「Agentforce Service Agent」だ。ウェブサイトからLINEやFacebookなどのSNS、モバイルアプリまで、様々なチャネルに実装できる、24時間365日、自律的に顧客をサポートするAIエージェントである。 これまで各チャネルに置かれていたルールやスクリプトベースのチャットボットは、決まったシナリオでしか対応できず、とれるアクションもFAQを検索して答えるといった限られたものに留まっていた。 一方のAgentforce Service Agentは、Data Cloud上に蓄積されている顧客情報を理解して、パーソナライズされた接客をする。さらには、直前までの文脈を汲み取った自然な会話をして、シナリオ外の要求にも臨機応変に対応。返品手続きや配送日時の変更といったアクションまでを自律的に実行する。 構築における手間も軽減される。従来のチャットボットでは、膨大なルールを事前に作る必要があったが、AIエージェントでは、“人に指示をするような”感覚で設定できる。 まずは、注文管理や修理、FAQなど、実行するジョブを「トピック」として定義、その上で各トピックでの具体的な「指示」を加えていく。最後に具体的な「アクション」として各データにアクセスする処理を割り当てる。これらはすべて自然言語を介して設定でき、用意されたテンプレートを活用することで、さらに素早く構築することも可能だ。 セキュリティや信頼性の観点から、ガードレールとして制限や制約を持たせることもできる。例えば、注文内容を変更するアクションに制約を持たせると、スムーズに人のオペレーターへとエスカレーションする。こうして人と連携しながら、顧客満足度を向上させるのが、同社がAIエージェントで目指す世界だ。 Agentforce Service Agentは、10月30日より、Einstein 1 Editionの購入もしくは、Enterprise Edition、Unlimited Edition、Performance Editionにアドオンライセンスを追加することで利用できる。価格は、“会話”単位での提供形態となり、日本での価格は調整中だが、米国ではひとつの会話の流れにつき2ドルからで提供している。 今後は、他の領域にも自律型AIエージェントを拡大予定だ。さらには、エージェント対応アプリやエージェントのアクションを構築するパートナーのエコシステム「Agentforce Partner Network」をグローバルで開始。日本でも、マーケットプレイスである「AppExchange」上で、パートナーソリューションが展開されていく。 文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp