「議員定数削減」って今どうなっているの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
「このままでいい」が本心?
気の早い向きは「何でもいいから削れ」と考えるでしょう。比例か小選挙区かの議論もしょせん猿芝居で、要するにもっともらしい言い訳をつけて結局何もしないでおきたいというのが真意ではないかといぶかるのも当然です。何しろ今の議員は、今の制度で当選したのだから「そのままでいい」が本心と推量するのもごもっとも。特に自公は衆参ともに過半数を持っているのだから自案が正しいと自信があるならばさっさと改正案を議員立法して可決成立を目指せばいい。「議員の身分に関わるから野党の意見も十分聞いて」といって先延ばすのは奇妙です。その「十分聞」くために国会審議があるのだから堂々と提出すればいいのです。
比例は「民意の反映」、小選挙区は「民意の集約」
確かに「比例か小選挙区か」が実は重要ととらえる人もいます。比例は「民意の反映」で小選挙区は「民意の集約」に効果があるとされます。比例だと小党にも議席が来て多様性を保てる半面でバラバラになりやすく「決められない政治」に陥りかねません。その点で小選挙区は2大政党政治へ持って行きやすく、現に1996年から導入されて民主党政権への交代、自民党への再交代が起きました。ただ1議席を争うため、例えば2強が争って51対49となったら51が議席を得、49が「死に票」となります。3位以下の政党はかすりもしないのです。 議員定数を削減させて留飲を下げるのも結構ですが、削られた結果として選ばれた議員が民意を代表していなかったり、デタラメな人達ばかりでは意味がありません。感情論は感情論として、まともな代表を国会へ送り込める仕組みは何かも合わせて考える冷静さも有権者に必要です。
--------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】