早大卒でテーマパークダンサーになったワケ 7年で俳優転身、数多の舞台に出演する38歳の素顔
掲げる目標は「生涯現役」
新卒で飛び込んだテーマパークダンサーの世界だったが、28歳のタイミングで俳優業への挑戦を決意した。「絶対にこのショーのあのポジションをやりたいという目標があって、それが決まった瞬間に今年で辞めようと決めました」。また、頭の中では将来のビジョンも思い描いていた。 「死ぬまで踊れるのであれば、ダンサーを続ける道もあったかもしれません。でも、そういうわけにもいきませんし、一度きりの人生です。歌うことも好きなので、踊りじゃない表現をやってみようと思いました」 そこから約10年。ミュージカルを主戦場にあまたの舞台を経験してきたが、「お芝居を、面白いと思えたのは最近なんです」と意外な言葉を口にする。 「お芝居って資格があるわけでもないですし、セリフを話していれば成立すると思われるかもしれないですが、実際は違います。お芝居をする上での知識だったり、アウトプットの仕方だったり、そういうノウハウが必要なんです。僕はそれは武器だと思っているのですが、それがようやくそろってきた感じがしています。歌も楽しくなってきたのは最近ですね。好きと得意って違うじゃないですか。ようやく自分の中でこれなのかなという感覚をつかみ始めたところです」 板の上で生の声を届けるのが舞台。「いい作品を作ることは大前提。お客さまがそれで喜んでくれるかは正直分かりません」と作品を作り上げるうえでのポリシーを語る。 「喜んでもらえる選択肢を選ぶことはありますが、演劇としてそればかりではダメだと考えています。『絶対に面白いから信じて!』と伝えられる確信を持つ必要があると思います。大学のサークルの頃から、大事にしてきた“3つのwin”があります。『お客さまが面白いと思う』『共演者が一緒にやっていて面白いと思う』『スタッフさんが一緒にやってよかったと思う』。この3つをそろえることを目標にして、日々臨んでいます」 今後の目標は、帝国劇場や日生劇場の大舞台の作品で、1曲ソロを歌うこと。「そこは絶対に経験したいです」と語気を強める。「お芝居は年齢によって演じる役も変化するので、一生楽しめると思っています。今後もいろんな人と関わりながら学んで成長していきたいです」。 掲げるのは「生涯現役」。「お話があれば、声の仕事や映像作品にも出てみたいです。こればかりはご縁だなと考えています」。形にこだわらずエンターテインメントというフィールドで笑顔を届け続ける。 □佐々木崇(ささき・たかし)1986年1月28日、東京都出身。早稲田大在学時はミュージカルサークル「Seiren Musical Project」に在籍。卒業後にテーマパークダンサーを6年経験。2014年から俳優として活動をスタートさせた。ミュージカル『エリザベート』(19年、22年)、ミュージカル『新テニスの王子様』シリーズや舞台『刀剣乱舞』など話題作に出演した。24年10月31日から上演のホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』では座長を務める。
中村彰洋