【エリザベス女王杯 みどころ】女王の座を狙う早咲きの才女と遅咲きの淑女
第49回エリザベス女王杯見どころ
「才女の復活」か「大器晩成の結実」か――近年のエリザベス女王杯を振り返ると、この2つのケースに当てはまる馬が多い。 【ガチ予想】秋の女王決定戦「エリザベス女王杯」をガチ予想!キャプテン渡辺の自腹で目指せ100万円! 例えば5年前の2019年。3連勝で2歳女王に輝いた後、桜花賞から8連敗を喫していたラッキーライラックが名手クリストフ・スミヨンのイン突きで1年8カ月ぶりとなる復活勝利を挙げ、再び女王の座に返り咲いた。 そして2022年。父モーリス、母ジェンティルドンナという両親併せてGⅠ勝という超良血馬ながら、激しい気性が災いして出世が遅れたジェラルディーナがクリスチャン・デムーロとともに道悪馬場を突き抜けて完勝。GⅠホースの仲間入りを果たした。 さらには昨年、クラシックに間に合わなかった“遅れてきた大器”ブレイディヴェーグがクリストフ・ルメールの手綱に導かれるように先輩古馬たちを完封して、新たな女王の座に輝いた。 そんな傾向があるレースだが、今年もこうしたケースに当てはまる馬が複数いる。まずは「才女の復活」に最もふさわしいのがレガレイラだ。 彼女のキャリアを振り返ると、常に牡馬への挑戦ばかりだった。2歳夏の函館でのデビュー戦には9頭中たった1頭の牝馬にもかかわらずにエントリー。しかもレースでは出遅れながらも上がり最速の末脚を駆使して快勝。 アイビーS3着を経て、暮れには女王決定戦の阪神JFではなく、牡馬相手のホープフルSに参戦。 ここでも出遅れたが、直線では抜群の切れ味を見せて先に動いたシンエンペラーを交わして勝利。ゴールを駆け抜けたその姿には輝かしい未来が待っているように感じられた。 しかし、牡馬クラシックへと敢えて挑んだ皐月賞は1番人気に支持されるもクリストフ・ルメールが落馬負傷のため北村宏司との初タッグとなったことが響いたか、直線で伸びずに6着に完敗。 続くダービーではルメールとのコンビ復活で巻き返しを図ったが、ここでも直線で伸びずに5着止まり。果敢に牡馬クラシックへと挑んだレガレイラはこの春、結果を出すことができなかった。 巻き返しのためにレガレイラが秋緒戦に選んだのはローズS。 キャリア6戦目にして初めて牝馬限定戦を選んだということもあり単勝1.7倍の1番人気に支持されたが、スタートで後手を踏んだ上に大外枠からレースとなったことで必要以上に後方からのレースとなったことが災いして5着。 またも上がり3ハロンはメンバー最速を記録したが、届くことはなかった。 3歳クラシック最後の一冠、秋華賞をパスしてまで迎えたこのレースは芝2200mという長丁場。しかし、ダービーでの追い込みやローズSでの追走を見ると距離はこれくらいの方がちょうどよさそうで、しかも京都外回りコースになれば持ち味の末脚はフルに生かせるはず。 最高のパートナーであるルメールとともに昨年暮れ以来の勝ち星をここで掴み、女王の座に返り咲きたい。 レガレイラと同様に、再びGⅠの舞台で輝くのを願っているのがスタニングローズだ。 3歳春にフラワーCを制して表舞台にやってきた薔薇一族の才女は秋に紫苑Sを制して迎えた秋華賞では直線に入ると鋭い末脚を見せて迫りくる二冠馬スターズオンアース、そしてナミュールらを振り切って勝利。 曾祖母ロゼカラー、祖母ローズバドが届かなかったタイトルを奪取してみせた。 しかし、続くエリザベス女王杯で道悪に脚を取られて14着に大敗したところからスタニングローズの苦難の道は始まった。 4歳になるとヴィクトリアマイルのレース後に左前脚に故障を発症し、1年近い休養を余儀なくされて4歳時のほとんどを棒に振ることに。5歳になってから3戦するもいずれも掲示板を外すという結果に終わっている。 薔薇一族の名に懸けて、まだまだ終われない――そんな思いを秘めた彼女は今回、新パートナーのクリスチャン・デムーロとのコンビを組む。 2年前に良血馬ジェラルディーナを開花させた彼の手綱に導かれ、復活勝利を挙げることはできるだろうか。 レガレイラ、スタニングローズが早い時期から大成した才女ならば、ホールネスは遅れてやってきた淑女である。 父はフランスダービー馬のロペデヴェガ、母ミスユナイテッドはイギリスの長距離重賞の勝ち馬というゴドルフィンらしいバリバリの欧州血統の持ち主である彼女は桜花賞の1週後にデビューを飾り、2戦目で初勝利。 当然クラシックには間に合わず、同世代の三冠牝馬リバティアイランドがジャパンCで2着に入った翌週、ようやく1勝クラスのレースを制したばかりだった。 ところが、4歳になって彼女は目を覚ます。2勝クラスの熊野特別を制して格上挑戦で迎えたマーメイドSで外から追い込んできて3着に入り、重賞でも通用することを証明すると、秋には新潟牝馬Sに出走。 重賞勝ち馬らも複数エントリーしているという中で直線力強く抜け出してきて快勝し、エリザベス女王杯への切符を掴んだ。 4歳馬ながらここまでまだ6戦しかしておらず、しかも3着以内を外したことがないという堅実派。 500キロを優に超える馬体から繰り出すパワフルな走りは女王の座にふさわしく、勢いならばメンバー随一。若武者・坂井瑠星とともに女王の座へと駆け上がる資格は十分にある。 かつての才女たちが復権するのか、それとも勢いに乗った遅咲きの淑女がタイトルをつかみ取るのか……今年のエリザベス女王杯も見逃せないレースとなりそうだ。 ■文/福嶌弘