年齢は30~40代、年収は3000~5000万円…「中国人富裕層」実像と訪日旅行の意外な楽しみ方
中国人富裕層が日本の旅に求めていることは「癒やし」と「特別な体験」
かつては団体旅行の「爆買い」ばかりがクローズアップされた中国人観光客。そのイメージは、今の中国人富裕層にはもちろん当てはまらない。彼らの訪日旅行スタイルは、すでにコロナ前から変わり始めていた。 「中国人富裕層は何を求めて日本に来るかというと、一つは癒やしです。富裕層にとって癒やされる場の代表は温泉で、1泊か2泊は地方の温泉旅館に滞在したいという人がとにかく多い。ただ、大浴場が苦手なので、ほぼ全員が露天風呂付きの部屋を希望します」 彼らが宿泊するのは当然、高級温泉旅館や洗練されたリゾートホテルだ。 「人気が高いのは星野リゾートの『星のや』『界』、奈良と熱海の『ふふ』などですね。皆さん大体、1泊10万円くらいのスイートに2泊か3泊します。 日本の温泉旅館は2食付きが多いですが、中国のホテルにはディナーまでついている宿泊プランはありません。中国人富裕層にしてみると、『立派な食事までついて、この料金でいいの』という感じだと思います。夕食の時に有名銘柄の日本酒を頼んでもすごく安いですし。日本の旅館はとても良心的な値段なので、皆さんコスパの高さに満足して帰国します」 ただし、いわゆる「温泉旅館の朝食」には戸惑うようだ。袁さんは富裕層たちから「日本の旅館の朝食は、どうしてこんなに早く始まって早く終わるのか」とクレームに近い質問をされたことがあったという。 「富裕層の人たちは、癒やしを求めて日本に来ています。温泉にゆったり浸かって、好きな日本酒を飲んでいい気分でいるところに、『明日の朝食は7時にしますか、8時にしますか』と聞かれたら、『えっ』となるんじゃないでしょうか。 たとえば、朝食がお弁当でもいいと思うんです。お弁当と風呂敷が用意されていると、チェックアウトしてから公園でゆっくり食べることもできますから。中国の30代、40代の富裕層にとって旅の楽しみの一つは写真をSNSにアップすることなので、さまざまなおかずが美しく盛りつけられたお弁当は喜ばれると思いますよ」 中国人富裕層が訪日旅行に求めていることはもう一つある。「特別感」のある体験だ。 「最近、『釣りがしたい』とか『釣った魚を旅館に持ち込んで食べたい』といった要望をよく聞きます。もちろん、富裕層の人たちは節約するために自分で釣った魚を食べたいと言っているのではありません。彼らは特別な体験がしたい。そのために特別料金を払ってもいいと考えているんです。 コロナ前の’19年頃から富裕層の間では日本酒が人気で、行楽上海オフィスでは日本酒の知識を学ぶ利き酒教室を主催しています。受講料が約6万円と決して安くはない額にもかかわらず、すぐに定員になるほど大盛況なんです。海外旅行が解禁され、訪日の機会に日本酒の銘柄をじっくり吟味したい、地方の酒蔵をめぐってみたいという声も増えています」