川勝平太・静岡県知事はリニアを「止めた」から辞めるのか、「止められない」から辞めるのか。
「やっと辞めてくれたか」
県庁の新人職員の訓示で職業差別発言をしたとして、抗議を受けていた川勝平太・静岡県知事が、釈明会見の最後に突然辞意表明をした、というニュースを見て「やっと辞めてくれたか」「これでようやくリニアが動く」と思った人は多かったのではないか。 【画像】次の静岡県知事は誰に?名前が挙がる3人はこちら 筆者はたまたまその日は静岡にいたので、翌朝の静岡新聞を買って読んだ。社説の見出しは「無責任のそしり免れず」と厳しかったが、中身を読むと以下のように意外にも辞任を惜しんでいる。 「リニア問題では、大井川の流量減少や南アルプスの環境悪化を懸念する県の立場が全国的には十分理解されない中で、知事の働きに流域から一定の期待があったのは事実だ。任期途中で職を放り出すことは、こうした期待を裏切ることになる。」 川勝氏は辞意表明の当日に、立憲民主党で渡部周衆院議員に電話し、リニア新幹線の2027年の開業が断念されたことから、「自分の責任は果たしたので、近く職を辞す」と語ったという。
リニアをめぐるちょっと怖い話
これはリニアを止めたから辞める、ということなのか。ただリニアをめぐって川勝氏はJR東海や国土交通省などを相手に一歩も引かなかったものの、最近は孤立無援の印象であった。これ以上引き延ばすのは無理なので辞めた、つまりリニアを止められないから辞めたのかもしれない。 川勝氏の辞任により次に誰が知事になってもリニアは動き出すことになる。だがちょっと怖い話がある。これはある政治家に聞いたのだが、日本のリニア開業の時期が遅れることによって中国に追いつかれ、日本で開業する頃には日本のリニア技術は中国に負けてしまい、従って輸出もできなくなるのではないか、という指摘があるのだ。 その恐れがあるにしても、幸い川勝氏が任期より1年早く辞めてくれるので、今後は強い政治主導でリニアを動かさねばならない。 問題は次の知事が誰になるかだ。前述の渡辺氏は「(川勝氏から)私の後やってくれ、というような直接的ではないが、今後の話について含みの形で言われた」と述べて、事実上の後継指名を受けたことを明かしている。 また産経新聞によると国民民主党の榛葉賀津也幹事長の名前も挙がっているという。 榛葉氏だと自民党も立憲も相乗りが可能だが、幹事長という立場で今、国政から離れるのは難しいかもしれない。