中国大使の「火の中発言」 昨年も「台湾有事は日本有事」を巡り問題発言
林芳正官房長官は22日の記者会見で、中国の呉江浩駐日大使が台湾との関係を巡り、日本政府が中国の分裂に加担すれば「日本の民衆が火の中に引きずり込まれる」と発言したことについて「極めて不適切だ。ただちに厳重な抗議を行った」と述べた。呉氏は過去にも同様の発言をし、日本政府が抗議した経緯がある。 【比較してみる】中国と台湾の軍事力 発言は20日、台湾の総統就任式に合わせて呉氏が東京都内の在日中国大使館で開いた座談会で出た。呉氏は「台湾海峡情勢に緊張がもたらされている根源は、台湾当局の外部勢力を巻き込んでの独立を企てる試みや、外部勢力が台湾問題でもって中国を制しようとすることにある」と主張し、「中国の周辺で軍事的なグループを作るのは誰であるか。答えははっきりしている」と暗に米国を批判。その上で「日本が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と日本が米国に追随しないよう牽制(けんせい)した。 呉氏は同時に「耳障りな言葉だが、言っておく必要があると思った」と述べ、反発を予想していることもうかがわせた。 座談会には鳩山由紀夫元首相や社民党の福島瑞穂党首、外務省OBら十数人が出席していた。だが、呉氏をいさめる出席者はなく、鳩山氏は呉氏の発言に「基本的に同意する」と述べた。 呉氏は昨年4月28日の日本記者クラブでの記者会見でも「台湾有事は日本有事」との見方は「荒唐無稽で極めて有害だ」とし、「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言した。 このときは林氏(当時は外相)が国会答弁で「極めて不適切」として外交ルートを通じて抗議したと明らかにした。 同種の発言を繰り返す呉氏に対しては、政府に厳しい対応を求める意見が出ている。松原仁衆院議員(無所属)は21日、政府の見解を問う質問主意書を衆院議長に提出。「脅迫発言」を「二度も繰り返すのは極めて不見識。日本政府に対し敬意を欠く」と指摘し、外交関係に関するウィーン条約に基づき「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)であることを通告し、追放すべきだ」と求めた。