「アメリカ二大政党制の岐路」(3)「動かない連邦議会」に第三政党への期待 上智大学教授・前嶋和弘
第三政党が勝てない現実
しかし、アメリカの現行の制度上では第三政党が大きくなれないような様々な原因があるため、実際問題として、第三政党が台頭することは非常に難しくなっています。 その原因の一つが、小選挙区制です。大統領選挙の予備選などを除けば、アメリカでは基本的に勝者総取り式の小選挙区が採用されています。小選挙区制では、有権者は自らの票を死票にしたくないという心理が働きます。そのため、既存の二大政党のどちらかに票が集まりやすくなるため、第三政党が議席を獲得するのは極めて難しくなります。 また、選挙のルール作りはそれぞれの州に決定権がありますが、そもそも民主党と共和党という2大政党が選挙のルール作りをしているため、第三政党の候補(あるいは独立候補)にとっては大きなハンディです。州によってルールは異なりますが、第三政党が立候補を出す場合には、ある程度の数の州民から署名を集める必要があります。署名を集める期間などもまちまちです。
さらに、第三政党が台頭しにくいのは、アメリカの政治文化に二大政党制が定着している点も大きいです。アメリカの国民にとっても、そもそも第三政党には全くなじみがありません。上述のように、自分の支持政党を民主・共和両党という二大政党ではなく、「独立(無党派)」と回答した数は4割程度いたとしても、これまでの様々な研究から、実際は「共和党寄り」「中道」「民主党寄り」に3分の1ずつに分かれていることがわかっています。このうち、「共和党寄り」は基本的には共和党と、「民主党寄り」は基本的には民主党と、いずれも親和性が強く、投票する確率も高いのです。つまり、本当の無党派はほんの少ししか残っていません。 連邦議会の支持率が下がっても、民主・共和両党という二大政党に代わるような新しい政党は構造的に登場しにくい形です。それでは現在の議会の機能不全を超えるような将来的なシナリオはあるのでしょうか。これについて次に考えてみます。 ・連載『アメリカ二大政党制の岐路』…全4回