社会保障をアテにする移民はもう許さない…イタリア女性首相の「移民ストップ計画」に支持が集まるワケ
■経済低迷に多数の倒産…どうするつもりなのか 政府は、難民を無制限に入れ続ける理由の一つとして労働力確保を挙げているが、難民は言葉の問題もあり、まだドイツ企業が欲しがっている労働力にはなっていない。15年、16年に入ってきた難民でさえ、未だに半分は社会保障で暮らしている。 ところが、現在、緑の党の外相が、地中海で難民を“救助”するNGOに、新たに190万ユーロを与えることを決めていたことが明らかになり(すでに130万ユーロは支払われたらしい)、大問題となっている。 NGOとは、そもそもNon-governmental Organization(非政府組織)のはずだが、それを政府は国民の血税で支援し、違法難民をイタリアに運ばせ、一方では、ドイツの国境警備を堅固にすると、まったく矛盾したことをやっているわけだ。国民が憤慨するのも無理はない。 ドイツは去年も今年もマイナス成長で、急速に不況に向かっている。今年9月の破産申請件数は、前年同月比で13.7%増。今年の6月を除けば、昨年6月よりすべての月の破産件数は、前年比で2桁の伸びとなっている(連邦統計庁)。このままだと、まもなく税収が劇的に減り、難民のためのお金も捻出できなくなるだろう。その時は、どうするつもりなのか? 現在、緑の党と社民党の支持率が地に落ちているのは、当然の帰結である。 ---------- 川口 マーン 惠美(かわぐち・マーン・えみ) 作家 日本大学芸術学部音楽学科卒業。1985年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ライプツィヒ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。2013年『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、2014年『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)がベストセラーに。『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が、2016年、第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞、2018年、『復興の日本人論』(グッドブックス)が同賞特別賞を受賞。その他、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『移民・難民』(グッドブックス)、『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)、『左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか』(ビジネス社)がある。 ----------
作家 川口 マーン 惠美