15分で「サザエさん症候群」の元を断つ…月曜朝イチからバリバリ仕事をする人がやっている「金曜午後の使い方」
■金曜午後に「15分の振り返り」を行う 【澤円】その修正にも通じることかと思いますが、クロスリバーでは顧客企業の従業員に週1回15分の振り返りの時間をお願いしていると伺いました。ゴールに向かってただ進むのではなく、きちんと振り返りの時間を取ることをルーティン化しているのは興味深いところです。 【越川慎司】業務生産性を高めるには、そうするための新たなことをやるか、いまやっていることをやめるかのどちらかしかありません。ただ、「いまは忙しい」と答える人が調査から97.5%もいることがわかりました。そんな状況では新しいことをはじめることは簡単ではありませんから、必然的にいまやっていることをやめることになります。 では、なにをやめればいいのでしょうか? それを見定めるために15分間の振り返りを行うのです。いまやっていることの大半は、「これをやればよりよい仕事ができる」「業務効率化につながる」などと「よかれ」と思ってはじめたことです。そうしてはじめたことは、なかなかやめることができません。振り返りによってその効果を検証していないからです。 【澤円】でも、振り返って「これは効果がないじゃないか」ということがわかれば、それをやめることができるというわけですね。振り返りは、どのようなタイミングで行うのがいいですか? 【越川慎司】カレンダー通りの勤務形態の人なら、金曜日の午後など1週間の終わりです。1週間のあいだに実践したことを振り返るのに最適ですし、休みを前にして気分的にも落ち着いているからです。加えて、いわゆる「サザエさん症候群」がなくなることもわかりました。 ■日曜夜に憂鬱になる「サザエさん症候群」も起きない サザエさん現象は、日曜日の夜になると翌日の仕事に対する不安から憂鬱な気分になる現象です。その不安の多くは、「週明けに取り組むことがわかっていない」ということに起因します。でも、振り返りによって「来週からはこれをやめよう」ということがはっきり見えていると、サザエさん症候群が起きないのです。 【澤円】成功するビジネスパーソンに共通しているのは、柔軟性なのかもしれませんね。柔軟性を持ち、失敗を恐れずに試行錯誤することが、成長の鍵となるのでしょう。 【越川慎司】大切なのは、完璧よりも進歩を目指すことです。毎週の小さな振り返りを通じて、自分になにが必要でなにが必要でないかを確認することで、自然と成果がついてくるものだと思います。 ---------- 越川 慎司(こしかわ・しんじ) 株式会社クロスリバー代表 元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。 ---------- ---------- 澤 円(さわ・まどか) 圓窓 代表取締役 1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教授、武蔵野大学専任教員の他にも、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またはセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より、日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。主な著書に『メタ思考』(大和書房)、『「やめる」という選択』(日経BP)、『「疑う」からはじめる。』(アスコム)、『個人力』(プレジデント社)、『メタ思考 「頭のいい人」の思考法を身につける』(大和書房)などがある。 ----------
株式会社クロスリバー代表 越川 慎司、圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=清家茂樹