なかなか見られない光景! ウーバーイーツ配達員が外国人の店で体験した出来事【チャリンコ爆走配達日誌】
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第39回 ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります! * * * インド、タイ、ベトナムなど、街を歩いているとよく見かける外国料理の店。その中には外国の方がやられているところも多くあります。そういった店では海外の言葉が飛び交い、料理を味わう前からその国の雰囲気を楽しませてくれます。 ウーバーイーツの配達員をしていると、そんな店に商品を受け取りに行くことも多いのですが、なかには日本の料理店ではなかなか体験できないこともありまして......。今回は、そんな外国の方がやっている店の話を紹介します。 コロナで外出が制限されていた頃、何店かあったのが24時間体制で営業をしていた店。テイクアウトが推奨され、店内の飲食を避けるように言われていたため、ほとんどの店は飲食スペースを閉鎖、厨房だけを稼働させてテイクアウト用の料理を作り、売上を落とさないよう努力していました。 飲食業界がピンチと言われていたこの時代、ピンチをチャンスに変えようとしたのが下町エリアにある中国の方が経営する店。 2020年の夏、夜12時頃に料理を受け取りに行くと、厨房にはウーバーイーツ、出前館、Woltなど各フードデリバリーの受注用のタブレットがズラリ。画面を確認しつつ中華鍋を振るうご主人と思しき男性、そして閉鎖している店内にソファーベッドを設置して仮眠をとっている奥さんと思われる女性。この頃は牛丼チェーンも時短営業で夜10時ぐらいに閉まっていたので、タブレットからは依頼が入ったことを知らせる音が鳴りまくっていました。「そんな働き方をして大丈夫か?」という思いもありましたが、この状況を商機と考える発想はすごいなとも感じました。 インパクトがあったのは、下町エリアあったタピオカドリンクの店。配達員用アプリのマップ画面に表示された場所にたどり着くと、目の前にあったのは店ではなくアパートのような建物。1階の入り口にインターホンが5、6個並んでいて、用件のある部屋のボタンを押して住人が解錠操作すると1階の扉の鍵が開くようになっていました。 商品を受け取りに来た私は「間違えた場所に来たかな」と思い、アプリの画面を再確認しましたが、目的地はここで間違いないようです。たくさん並ぶインターホンをよーく見ると、そのうちのひとつにウーバーイーツのシールが貼られているのを発見。そこのボタンを押すと店の方が......出てきません。30秒ほどして再び押しても出てきません。たまに店の方が住所の設定を間違えるパターンがあるので、これもミスかと思って周囲を見渡していると突如、上からこんな声が。 「ウーバーさん、これ持ってって」 目の前にシュッと現れたのはフックにかけられた袋。そして中にはタピオカドリンク2個。上を見ると、3階の窓にはヒモを握った店のスタッフと思われる外国の方。コロナをきっかけに宅配業者専用ロッカーが登場するなど、店員と配達員が近い距離で会わないようにするシステムがいろいろ生まれましたが、こんなソーシャルディスタンスを意識した商品の受け渡しは初めてと言うか、後にも先にもこの店しかありません。