貴乃花親方に飛び火した横綱・日馬富士の暴力問題の本質を整理してみると…
2016年3月の理事長選で現理事長の八角親方(元横綱北勝海)に惨敗した貴乃花親方は現執行部とは対立関係にある。現役時代はガチンコ力士で知られ、2003年に引退。2010年には所属する二所ノ関一門を離脱して理事選に立候補し、事実上の破門を受けながら同調する年寄の支持もあって当選した。いわゆる“貴の乱”を起こし、その年の大相撲野球賭博問題ではある力士の処分を巡って協会執行部と対立、翌11年に八百長問題が起き、貴乃花親方は貴乃花一門の総帥として、理事長の座を目指し、自らの手で相撲界を改革する野望を抱くようになった。 その背景が分かれば、今回の暴行問題で次から次に出てくる疑問も解けてくる。協会に先に報告すれば真相解明をうやむやにされると考えた結果の先手の被害届提出。さらに場所中の問題発覚という世の中に与える強烈なインパクト。ただ、巡業部長としての責任は当然問われることになり、協会執行部は、冬巡業から貴乃花親方を外すことも考えているという。診断書を作成した医師の談話発表は協会側の最初の反撃ともいえる。強引すぎる貴乃花親方の手法は命取りともなりかねない。 本来なら日馬富士の進退が問われる暴行問題だが、そこはいま二の次になっている。ただ、警察が最終的に日馬富士をシロと判断しても、現役を続けていくのは難しいという意見が多い。その一方で、処分はなされるが、横審の引退勧告までは発展しないのではないか、という見方もある。 そして、仮にビール瓶などの凶器で殴ったと断定されれば、「素手」と証言した白鵬にも批判が飛び火する可能性もある。 何より急がれるのは、沈黙を続ける貴乃花親方が口を開き、被害者である貴ノ岩が姿を見せること。しかし、貴乃花親方は相撲協会の危機管理委員会による貴ノ岩への聞き取り調査を拒否した。 このままでは、憶測が憶測を呼び、問題の本質が何かがわからなくなってくる。相撲ファンが置き去りになってしまっている状況を考えなければ、人気回復に向かっている相撲界は、また危機を迎えることになる。