生成AI「本部では使われているけど……」 みずほFGがぶち当たった、社内普及の壁
3段階ある活用フェーズ
しかし、ただ単に導入しただけでは、Wiz Chatがただのチャットツールになってしまう恐れがある。そこで、同グループでは同年7月と8月に「生成AIアイデアソン」を実施。アイデアソンとは、「アイデア」と「マラソン」がかけ合わせた造語だ。決められた時間でグループごとにアイデアを出し合いブラッシュアップさせ、その結果を競わせる。 さらに2024年4月には追加モデルとしてGPT-4 Turbo with VisionやDALL-E3をいち早く導入し、生成AIへの画像入力や出力に対応した。1段階目では、このようにまず早く導入し、とにかく生成AIを使ってみることを目的としている。 2段階目が、生成AIに社内データや、外部の最新データを活用するフェーズだ。「今のみずほグループは、このフェーズ2にいる」と齋藤調査役は説明する。2024年8月にはコールセンター業務で生成AIの活用を始めた。事務手続照会AIの「Wiz Search」、融資稟議や提案書作成AIの「Wiz Create」などといったアプリケーション群の開発も進めている。 そして3段階目が、生成AIのカスタマーサービスへの活用だ。 「顧客サービスへの活用は、まだ結構な時間がかかると思っています。利用者に提供していく上では、AIがその文脈を、責任を持って理解する必要があるため、ここは社内活用とは別の段階だと捉えています」
展開進む3つの社内生成AIツール
みずほグループでは、大きく3つの生成AIツールを社内で展開・開発している。1つ目がWiz Chatだ。これはソフトバンクの「生成AIパッケージ」を活用し、構想から3カ月程度の2023年6月に導入した。Wiz Chatは米マイクロソフト社のサービス「Azure OpenAI」を活用する形で、全国内社員に導入している。 2つ目が、事務手続照会AIのWiz Searchだ。これは同グループの内製開発ラボによって内製開発したアプリで、膨大な社内手続を検索したり、関連情報を取得したりして回答を生成するものだ。 「みずほ銀行に限らず、金融機関の手続のルールはかなり膨大で、何万ページにも及びます。これを簡単に検索し、AIによる回答を出せないかというところから開発が始まりました」 Wiz Searchは現在PoC(概念実証)を実施中だ。サービスや製品に用いられるアイデアや技術が実現可能かを確認しながら、精度改善チューニングを進めている。 3つ目が、「個別特化AI」と呼ぶ「Wiz Create」だ。これはプレゼン資料を読み込んで説明スクリプトや指摘事項、想定Q&Aを生成するアプリで、「想定QA生成AI」とも呼んでいる。 「例えば銀行の法人営業担当が中小企業の社長にところに行くと、決済商品や資金調達、M&Aなどの提案をするわけですが、作った提案書をいきなり社長に見せるのが不安になる営業担当が多いそうです。しかし、その前に上司に見せたくても忙しくてなかなか捕まらないことも少なくないのです。そこで提案書をアップロードするだけで、社長が言ってきそうな質問を指摘してくれるのが、この想定QA生成AIです」 想定QA生成AIも現在PoC(概念実証)を実施中で、「資料への指摘生成」機能などを順次追加しながら開発を進めている。