キリンホールディングスの南方健志社長＝27日、東京都中野区中野(酒巻俊介撮影)

キリンホールディングス（HD）の南方健志社長は産経新聞のインタビューに応じ、人口減などにより酒類市場が縮小する中で「現実的な戦略が必要」と述べ、健康分野への注力など酒類事業にこだわらない柔軟な経営を進める考えを示した。セブン＆アイHDが海外企業から買収提案を受けたことに関しては、円安を背景に日本企業は投資家などから事業の選択と集中を迫られることも多いが「投資家とは見ている視点が違う」とした。主なやり取りは次の通り。 ■社会課題解決の提案に共感 －－4月に発売したビールの新ブランド「晴れ風」が大ヒットした 「味やパッケージなどで『新しい風』を感じる心地良さを創出し、既存品と違う世界観を打ち出せた。風物詩がある中でビールは飲まれてきたが、サクラの保全活動や花火大会支援といった取り組みともリンクさせ、こうした社会課題の解決に向けた提案は若い層からも共感してもらえた」 －－医薬事業やヘルスサイエンス事業にも力を入れているが、酒類事業が売り上げ構成比率のトップであることへのこだわりは 「人口が減ることを考えれば酒類の販売量は下がっていく。現実的な戦略を打ち立てないといけない。それぞれの事業が自律的成長を続けるのが目標だが、あくまで数字はその結果だ」 ■弾力性ある企業構造を －－米中摩擦や台湾問題など「チャイナリスク」が増大しているが、中国事業はどう考えるか 「一定規模のビール需要があるほか、ヘルスサイエンス事業関連ではサプリメント市場が年5％伸びており、中国を無視するわけにはいかない。当面は現在の事業規模を維持する。ただ日本企業の社員らがスパイ容疑で摘発される状況などを見ると、一定のリスクを意識した上でビジネスをする必要があるだろう」 －－セブン＆アイが海外企業から買収提案を受けたが、同様の流れは続くのか 「円安である以上、海外から見て日本企業のアセット（資産）は魅力的。海外と比べて割安な株価も魅力がある。こうした状況が続けば海外勢による買収提案は続くと思う。ある意味、今回の件も時代の流れだ」 －－海外の投資家は日本企業に対し注力する事業を絞るなど「効率性」を求める