増える「推し活」トラブル、あなたは大丈夫? 精神科医が原因と対処法を分析
トラブルは「推し活」のせいではなく個人の問題
――多くの人が「推し活」を楽しんでいる一方、まさに金銭面やSNS等でトラブルが発生する事例も見られますね。 熊代:「推し活の功罪」の「罪」については端的に依存しすぎてしまう、あるいは具体的にお金を使いすぎてしまう、ということがよく語られると思います。 ただ、そうした問題を抱える人がもし「推し活」をしていなかったら、お金は使っていなかったのか? 何かに依存することはなかったのか? と考えるとそうではない。 何かに依存しやすい状態にある人、お金をコントロールしづらい心理状態にある人が「推し活」にハマってしまった結果、アンコントロールな状態に陥ってしまうのではないでしょうか。 ――「推し活」が孕む問題というより、それを行う個人の性質の問題。 熊代:そう。ただし、その上で社会の問題として考え直すなら、SNS上でお互いの「推し活」を煽り合ってしまった結果、気付いたら活動がインフレしてしまう面もあるでしょう。 あるいは「推し活」をする人にお金を使わせるような、言ってしまえば「搾取」するような仕組みがビジネスとして組み込まれていてもおかしくない。それは個人の問題だけに矮小化してはいけない部分ですね。システムの問題も無視してはいけないものだと思います。
――「推し活」に依存しすぎないようにする秘訣はあるのでしょうか。 熊代:難しいですが、ひとつ言えることは、心を満たしてくれるものがなさすぎると暴走しやすいですね。これは「推し活」に限りませんが、ひとつのものだけが心の拠り所になってしまうと、どうしても人はそこに捕らわれてしまいやすい。 だから、推し以外にも自分にとって大事なもの、心の拠り所になるもの何かがあるほうが、「推し活」自体もスムーズになると思います。推しを複数つくる、という方法も有効です。その場合はアイドル、アニメ……など異なるジャンルで推すのが理想的ですね。
「推される側」も意志を持って成長していく
――著書(※)の中で「推しの対象を理想化しすぎない」とも書いていらっしゃいました。 熊代:それが意外に難しいんです。我を忘れて「推し活」に夢中になってしまっている人の中にはやはり、否応なく対象を理想化しすぎてしまう人もいます。あるいは、たまたま推しがSNSで自分に「いいね」をつけてくれたという出来事をきっかけに、気持ちがエスカレートしてしまうこともあるかもしれない。 「推す側」と「推される側」の心の距離感をいかに保つかというのは、理想のファン活動を考える上で大切な要素です。 応援していた相手がスターダムを昇っていくとか、あるいは推していたコンテンツの作風が変わっていくようなことも、きっとあるでしょう。結果、最初は理想の推しだったのに気付いた時には失望して、逆恨みするようになってしまう、といったことも起こる。 ※『「推し」で心はみたされる? 21世紀の心理的充足のトレンド』より