出演オファー続く若手俳優・水上恒司「こういう役がやりたい、という欲がない」
◆「この映画は痛みや理由を伴っている」
──本作において、水上さん演じる要にとっても重要な人物のひとりである、暴走族総長の「あっちゃん」を演じた醍醐虎汰朗さんのカリスマ性には驚かされました。一般的には、爽やかなイメージですが。 彼の持っている身体能力があってこその「あっちゃん」だったと思いますし、彼にしかできないと思います。冷徹さや残酷さを可愛さの陰に隠して、仲間たちになんでもない顔で接しているのは不気味ですよね。 ──不気味というか、キレたときの表情はめちゃくちゃ怖かったです。 要の反応があっちゃんを印象付けると思ったので、そこはすごく意識しました。醍醐くんの素質だけで、あっちゃんのヤバさを表現できたのは、彼を信じられたからだと思います。また、原作(作画)のみずたまことさんが、『OUT』のヒロインは安倍要だとおっしゃっているように、あっちゃんと達也、要の三角関係みたいなものも考えながらやっていました。 ──完成作を観てどのように感じられましたか。 面白いと思いました。これから公開を迎えるにあたって、ドキドキする反面、自信もあります。品川監督とスタントコーディネーターの富田稔さんが、「アクションをダンスにしたくない」とおっしゃっていて。殴るときの拳や手のひらの痛みに、殴る理由や感情を乗せていかないと、ただのアクション映画になってしまう。でも、この映画は痛みや理由を伴っている。だからこそ、僕はこの映画を観ていて飽きないんだと思いました。 ──最後の抗争でも、仲間を思う気持ちがアクションに乗っているように感じました。 でも、よくよく考えたらみんなアホなんですけどね(笑)。結局、喧嘩の原因はくだらないことなんです。そのくだらないことをカッコつけてやっているのが面白いんだと思います。 ──確かに、チームの面子のことしか考えてませんからね(笑)。 でも、大人になればなるほど、それだけでは生きていけない。だからこそ、大人がいいなと思ったり、くだらないと思ったり。それと同時に、こういう風に生きていくのが男なんだと思っちゃうバカな子どもたちがいるわけです。 世代や性別など、人によって受け止め方が異なるのがこの映画だと思います。地方を回ってやんちゃそうな観客を見たら「調子乗んなよ」と言っていかなきゃいけないと思ってます(笑)。一方で、そういう風に生きられる彼らが羨ましい気持ちもあります。 ──12月に公開される映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』もそうでしたが、水上さんは抑制の効いた演技が印象的です。どのようなことを意識して演じてらっしゃるのでしょうか。 こう言うと誤解を招くかもしれませんが、僕は芝居しながら感情が動くことがないんです。大事なシーンを初日に撮影する現場もあって。それで相手を好きな感情を抱けと言われても無理なんです。そのキャラクターがなにを感じているのかを理論的に理解していないと、「現場で考えるな、感じろ」だけでは歯が立たないときがあるんです。 ──なるほど。 『あの花~』では、彼の心では感情が渦巻いていても、それを出したりしません。それでも、その感情を考えながらやることが大事だと思いました。抑制しようと思って演じたわけではなく、心のなかでは動いていることを忘れないで、彼に寄り添いながら作りました。そうやって積み上げたものがどこかのシーンで爆発するのが、役者が快感や幸せを覚える瞬間だと思います。