娘は4万人に1人の難病、不安から一転「プラス」に思えるように 母の新たな道 #令和の子
一番つらかったことは、 “ミルクが飲めない”こと。ミルクを飲むことが出来なかった妃加里ちゃんは、鼻から管を入れる「経管」でミルクを注入していた。「なぜ飲めないの?」、「飲んだら普通の子と一緒になれるんじゃないか」そんな気持ちを抱えながら、上手くできないことに対して苛立ちが募る日々。
夫・淳貴さんから、「今はわが子が病気でマイナスとしか思えないけど、プラスの部分もあるはず」と励まされるが、紗代子さんの心には、“プラスなんてあるわけがない”、“健康の方が良いに決まっている”というマイナスの思いだけが積み重なっていった。
心境を変えたのは“病名の発覚”
不安だけが募る日々。しかし、妃加里ちゃんの病名が発覚したことを機に、紗代子さんの心境は少しずつ変化していく。「“病気だから飲めない”、“仕方がない”と(妃加里ちゃんの成長を)少しずつ受け入れられるようになった」と当時を振り返る紗代子さん。また、2人目のお子さんの誕生も自身を知るキッカケになった。
「買い物に行くと、(妃加里ちゃんが)ベビーカーに乗っていたり、子ども用の椅子に座っている姿を見て、“あの子、結構大きいのに座ってるね”と、不思議そうに見られたりして。妃加里の時は経管が付いていたこともあって、外へ連れていけなかったけど、下の子が生まれてからは、(妃加里ちゃんも)外に連れていくことが増えました。私の気持ち的に、人の目を気にしていたことがわかりました」と話す。病気を受け入れることで、人の目が気にならなくなったという紗代子さん。今は、妃加里ちゃんと楽しみながら、外へ出かけているという。
妃加里ちゃんが教えてくれた“新たな道”
そんな心境の変化は、紗代子さんの仕事にも変化を与えていく。妃加里ちゃんの病と向き合うなかで、重症児の医療支援制度や難病の子を持つ母親らが集まる会で、“親が亡くなった後”の我が子の生活を心配する声を耳にするようになった紗代子さん。 「障がい児の親御さんはいろいろな不安があって、中でもお金の悩みは一生つきまとう。うちの子の場合だと、将来自分で管理するのが、難しいだろうなと思うところもあります」と話す。そんな声を聞くなか、心に芽生えたのが「そういう不安を私が手助けできたら」という気持ち。