名古屋中1いじめ自殺訴訟、市が和解案に応じず賠償請求も棄却…「娘も『やっぱりね』って言うと思う」遺族の失望
名古屋地裁「義務を負っていたものとはいえない」
判決で名古屋地裁は「(華子さんが亡くなる前の)17年12月当時、本件いじめを具体的に認識することができたとはいえないから、直ちに本件生徒に丁寧な面接をしたり、養護教諭に引き合わせたり、本件生徒の両親に十分な説明をしたり、教員同士で十分な情報共有をしたりすべき義務を負っていたものとはいえない」「体制を準備したとしても、直ちに今回のいじめを予防したり発見したりすることができたとは認めがたい」などとして訴えを退けた。 また、華子さんの死亡直後、校長が信太郎さんに対し、自殺を否定する次のような発言をしていた。 「(華子さんは合宿に行こうとして)誰もこないので、あれおかしいなということで一旦家まで戻って(中略)あれどこかなと思って結局9階まで上がって皆の集合場所どこかなと思って無防備にあそこから見(て落ち)たのかなと僕は思ったんですよ」 この校長の発言について裁判所は、「遺族に対する配慮が不足していた」としながらも、「その時点においては、不適切であったとは必ずしも言えない」と判断した。
名古屋市は和解を“拒否”していた
判決後、筆者の取材に対して、信太郎さんはこう話した。 「判決文は、“問題があってもいい”と、学校がいじめに対応しないことを容認している内容になっている。“たしかにおっしゃるような事実はあるけれど、法的責任はないんだよ”の繰り返し。娘も、『やっぱりね』って言うと思います。名古屋市からは、子どもの命に対しての真剣度や重大性みたいなものを感じたことがないですが、それが露呈した裁判じゃないかと思っています」 実は裁判の結審後、裁判所は和解案を示していたといい、2月7日、非公開で協議が行われた。信太郎さんは和解案に応じようとしたが、市側が応じなかったため、和解は不成立となっていた。 「僕らもやりたくてやっている裁判ではない。和解協議にしても、我々は(裁判所の案を)全面的に飲みますと伝えましたが、市側は一切飲まないと。その理由を聞くと、名古屋市は個別の案件には対応しないというもの。それと、私と『約束するのが重いから』などと言っていました。さすがに裁判所も理解できないと言っていました。結局、最初から最後まで市側は全否定。判決の時、被告席には誰もいませんでした」(信太郎さん) 信太郎さんは「気持ちとしては今すぐ控訴したい」としつつ、「戦うにも精神力や資金など体力が必要です。家族とも相談します」と控訴についてはこれから検討するとした。