夫が優しすぎてお金が貯まらない?「節約できない妻」へのFPのアドバイスとは
「子供の学費と老後資金を貯めたい」と相談にやってきた49歳の妻。支出を減らして貯金、投資に取り組み……とやる気はあるのにうまくいかない。よく聞くと「夫が優しすぎる」ようなのです。夫婦で家計管理&資産形成を邪魔する、夫の「優しさ」とは?FPが解説します。(家計再生コンサルタント 横山光昭) ● 夫婦で資産形成に取り組む難しさ お金を貯める・増やすことは、一人暮らしなら自分の考えや努力で進められます。しかし夫婦の場合、そうはいかない場合もあります。お互いの協力と理解が、うまくいくポイントです。 この「夫婦で」という点に難しさを感じる場面が多々あります。家計に非協力的な態度、夫婦が別サイフであるがゆえの情報の分断、そして意外にも「夫が妻に優しすぎる」ことも、貯蓄の妨げとなります。「自分の使い方も悪かった。一緒に頑張ろう」という建設的な優しさは良いのですが、「大変だよね、できなくても仕方がない」という言葉は、その裏で「僕はできない、キミがやるんだよね」と主体性を放棄しているようなものです(言っている本人にそんな思惑はないのかもしれませんが)。このように、優しさの種類によって、貯蓄の成否が分かれるのです。 これは夫婦どちらの立場でも起こり得ることですが、問題に向き合わないために良い影響に気付けず、家計の改善も資産形成も停滞してしまいます。
● 高2の息子の学費と、老後資金を貯めたい パート主婦のUさん(49)は、息子が小学校中学年になるまでに500万円ほど貯めましたが、その後はほとんど増やせていません。息子は現在高校2年生(16)、会社員の夫は48歳です。 今後は息子の塾代や大学受験費用、入学金、学費などが必要です。また、夫婦ともまもなく50歳となり、老後資金も意識すべき時期。教育費と老後資金の必要性を感じ、家計改善と資産形成の相談に来られました。 話を伺うと、家計には十分な改善余地があると思われました。生活防衛資金となる預貯金はすでに確保済みでしたから、まずは支出の削減に取り組み、余剰金があればそれをNISA口座に回し、節約を意識した積立投資をしていけばいいと提案しました。大学進学費用を全額確保するのが難しくても、貯金を使ったり、今後の家計から学費の積立をして捻出したり、それに合わせて投資を崩していけば対応可能です。さらに投資を継続すれば、65~70歳までには1000万~1500万円程度の資産形成も可能ではないかと思ったのです。 ● 自ら提案した取り組みを継続できない こうお話をしたあと、Uさんは「家計の支出を見直して、資産を作れるように頑張りたい」と意欲的に取り組み始めました。支出を絞る目標は、毎月13万円前後かかっている食費の削減と、貯蓄性の高い生命保険の見直しに設定。相談に通ってこられるごとに、実効可能そうな改善策を相談して決め、次の面談の時までに実行していくことになりました。 細かなところにも意識したいというUさんの希望で、さらに「食材の無駄を出さない買い物」「週1日の支出ゼロデー」にも挑戦しました。 しかし、自ら提案した取り組みにもかかわらず、Uさんは継続できません。一時的に成功して支出削減できたことはありましたが、「これ以上は無理」「食材が不足すると不安」という理由で元に戻ってしまいます。 なぜうまくいかないのか?よく聞いてみると、夫に「仕方がないよ」などと言われ、その言葉に、Uさんも安堵してしまう……という流れのようです。生命保険についても、保険の基本的な考え方について十分に時間をかけて説明したので、理解されたようでした。しかし「貯蓄型の保険を手放せない」「保障を今と変えるのは不安」といい、見直しが進みません。 結局のところ、Uさん一人ではどうしていいかわからない、決められないということが、変化を妨げているようです。夫に相談しても「キミが無理というなら、きっと無理なんだよ」「できなくても仕方がないよ」「無理しすぎないでね」と言われるだけ。Uさんは「夫はやさしいから負担をかけないようにそう言ってくれる」と言いますが、実際には異なるように感じました。