ビール列車があるのに、なぜ「京急蒲タコハイ駅」は非難された? 現地で聞いた「何が悪かったのか」の声
酒類のマーケティング全てを否定しているわけではない
ASKの公式Webサイトで、「『京急蒲タコハイ駅』への駅呼称変更とホームでの酒場開店の中止を求める申し入れ書に関するお問い合わせについて」(6月18日付)を閲覧してみた。そこでは、酒類業界団体が共同で定めた「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」(1988年12月9日制定、2019年7月1日最終改正)について言及している。 しかし、「今回の事例のように、駅名自体を酒類の商品名にして駅空間の仕様を変更することや、プロモーションの一環として駅ホームで酒場を営業することは、当時はまったく想定していなかったため、自主規制項目に規定されていない」と明記している。 つまり、サントリーと京急は、法、条例はもちろん、自主基準をも破っていなかったのだ。 お酒を使った街の活性化イベントは、ビールを楽しむ「オクトーバーフェスト」など、公園のような公共の場で数多く開催されている。こうしたイベントが、「公共性を完全に無視した愚行」として、今後は開催されなくなるのではないかという不安や疑念が、全国各地の商店街や行政からも聞かれるようになってきた。 しかし、ASKは「酒類のマーケティングのすべてを否定しているわけではない」としている。今回は不特定多数が利用する極めて公共性が強い場といった駅の特殊性を勘案し、駅に限定した超法規・超自主基準の抗議、中止の要請だったと考えられる。
京急蒲タコハイ駅イベントに参加してみた
筆者が京急蒲タコハイ駅イベントに参加したのは、6月9日の午後5時頃だ。 まず、京急蒲田駅の京急蒲タコハイ駅酒場を訪問した。駅でのイベントは午後1~7時に開催されている。 3階2番線ホームに設けられた受付には、長い列ができていた。列には若い人のグループもあれば、カップル、熟年の夫婦、ママたちの集まり、インバウンドとおぼしき外国人も見受けられた。女性1人で飲みに来ている人もいた。 2番線ホームは電車が発着していたわけでなく、停車している車両が酒場の座席として利用されていた。 ASKと主婦連からクレームが入ったからか、列に並んでいる時に、アンケートにチェックを入れるように求められた。その中には、「あなたは20歳未満ですか」「あなたは妊娠していませんか」などといった設問もあり、「いい歳の男(筆者)を、見たら分かるだろう」と苦笑せざるを得ない項目もあった。それだけ現場は、ピリピリしていた。 20分ほど並んで、300円でタコハイ1杯と餃子2個がセットで楽しめるチケットを買い、会場に入った。タコハイも餃子もまたも長い列。タコハイを確保するのに10分、餃子は30分ほどかかった。餃子は鉄板で焼いてアツアツを提供するので、一度提供分が売れてしまうと焼くのに時間がかかるのだ。 やっとワンセットのタコハイと餃子を確保して、飲食する頃にはくたくたになってしまった。サービスで「南アルプス天然水」も付いてきた。そうこうしているうちに、田中みな美さんの「みなさん、お疲れさまでした。ハイ、タコハイ」といった30秒ほどの場内アナウンスが流れてきたと記憶している。 実際に参加した感想としては、並んでいる時間がやたら長く、おかわりしようにも「またあの行列か」と思ってしまう。そのため、泥酔する前に帰りたくなった。筆者が見た範囲では、いわゆる「酔っぱらい」はいなかった。 たいへんな活況で、京急の広報によれば4日間で約6000人が訪れたという。