宇宙に還った安倍晴明…道長に遺した「光と闇」の警告について考察【光る君へ】
吉高由里子主演で『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。8月25日放送の第32回「誰がために書く」では、藤原道長を支えていた陰陽師・安倍晴明が逝去。その異色のキャラクターと、彼が道長に最後に送った言葉について考察する(以下、ネタバレあり)。 【写真】降り注ぐような星の幻影を見て世を去った晴明 ■ 伊周を内裏に戻したことで…第32回あらすじ 一条天皇(塩野瑛久)は藤原道長(柄本佑)を牽制するために、皇后・藤原定子(高畑充希)の兄・伊周(三浦翔平)を、内裏に呼び戻すことを画策する。その対応に悩む道長の元に、陰陽師・安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)危篤の知らせが。晴明は見舞いに訪れた道長に、光を手に入れることができたことを告げると同時に「光が強ければ闇も濃くなります」という警告を伝え、予言通りその日の宵に世を去った。 天皇の望み通り、藤原伊周は陣定に参加できるようになった。しかしそれからほどなくして、内裏に出火騒ぎが起こり、三種の神器の一つ「八咫鏡」が焼失。東宮・居貞親王(木村達成)は、出火は伊周を内裏に戻した祟りであり「天が帝に玉座を降りろと言うておる」と道長に訴える。その一方伊周は一条天皇に、出火は自分に不満を持つ者の放火と断じ「信ずるに足る者は、私だけにございます」と言い聞かせるのだった。
これまでのイメージとは少し違った『光る君へ』の晴明
天皇の一声で『源氏物語』連載が確約される、それにともなってまひろが女房として内裏に出仕する、藤原伊周が政の表舞台に戻って来る・・・と、いろいろなターニングポイントが多かった第32回。そのなかでも特に大きかった変化が、この物語のトリックスターとなっていた、陰陽師・安倍晴明の逝去だろう。道長にとっては、牛車ではなく早馬で駆けつけるほど、いつの間にか大事な人物となっていた。 以前のコラムにも書いたが、安倍晴明(せいめい)は人知を超えた能力を使って、都を脅かす魑魅魍魎を退治するヒーローというイメージが強かった。しかし実際は、星の動きを読んで天変地異などを予測したり、暦や時刻を管理するなど、いわば一国家公務員のような存在だったそう。 『光る君へ』の晴明(はるあきら)は、多少は呪術的なことも請け負うけれど、基本的に「偉い人の使い走り」であり、さらに損得勘定や政治的謀略にも長けているという、かなり人間的な面が強調されるキャラクターとなった。 この放送前日の『土スタ』に登場したユースケ・サンタマリアは、実際に人間臭さを意識した役作りをしたと語った(31日・昼2時50分までNHKプラスで視聴可能)。当初の大石静の脚本では、ややエキセントリックな人物として描かれていたが、「そういう自分が思い浮かばない」という役者としての直感で、胡散臭さと計り知れなさ、俗っぽさと神聖さを同居させた、これまでにない安倍晴明像を作り上げることに成功。 その甲斐あってSNSでも「面白いキャラクターになってたな、ユースケ安倍晴明」「最高の安倍晴明でした」などの声が上がっていた。 生涯星を見つづけてきた人らしく、降り注ぐような星の幻影を見て世を去った晴明だが、道長の今後の人生の安泰を約束しつつも「光が強ければ闇も濃くなる」という、かなり意味深な言葉も遺していった。 この「光」というのは、天皇の外祖父となり、まさに位人臣を極める道長の未来であり、その出世をまひろが『源氏物語』で後押しするということだろう。では「闇」とはなんのことだろう?