かつてスズ子（趣里）に投げかけられた問い「あなたはどうして踊るの？」

　アユミは“次世代そのもの”なのだ。美空ひばり、江利チエミの要素を持ちつつ、雪村いづみを含む「3人娘」を象徴する存在とも言える。演じる吉柳咲良はミュージカル出身ということもあって歌唱や表現力に長けており、以前にも『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』（NHK BS）で山口百恵を演じていることもあって昭和アイドル役がいたについている。そんな彼女の微細な表情から、大和の面影……負けず嫌いで自信がある様子と、自分がスターになる“確信”がうかがえるのだ。スズ子にとって歌手としてスターである自分の居場所を脅かす相手でありながら、かつて尊敬していた先輩の娘でもあるアユミを通して、スズ子はかつて自分に投げかけられた問いを思い出す。 「あなたはどうして踊るの？」 　何者でもなかったあの頃、投げかけられた問い。自分の人生を変えた問い。それが巡り巡って、大スターになった今のスズ子に戻ってくる。アユミとの出会いはスズ子に初心を思い返させるだろう。最終章に第一章に立ち返る演出が素晴らしいと感じると同時に、この問いが再びスズ子の人生の決断に大きく影響を与える予感がする。