地下鉄出入り口近く、並ぶタクシー… 大阪・長居交差点で全国最多19件の事故
一般社団法人「日本損害保険協会」がまとめた令和5年の全国の事故多発交差点のうち、ワースト5の11カ所(同数含む)の中で、大阪市内の交差点が6つを占めた。背景には碁盤の目のように走る大阪特有の道路事情があるとされる。全国の交通事故件数が減少傾向にあるなか、危険度の高い交差点は都市部に集中しており、安全性を高める対策が急務だ。 【画像】事故が多発する長居交差点の状況 東京の池袋六ツ又交差点と並んで全国最多の19件だったのが、大阪市住吉区の「長居交差点」だ。5車線(一部6車線)の道路同士が交わる大きな交差点だが、大阪府警によると、令和元~5年で57件の事故が発生。そのうち16件が北から東方向への左折時の事故という。 11月の中旬、平日の昼前に実際に現場を訪れると、自転車で横断歩道を渡る人たちや、交差点北側の左折レーンにあるタクシー乗り場で客を待つタクシーなど、予想以上の交通量があった。タクシー乗り場をこえて左折すると、すぐにバス停があり、混雑時には、タクシーやバスをよけながらの左折を迫られる場合も想定される。 交差点の曲がり角の歩道には大阪メトロ長居駅の出入り口階段があり、生い茂った樹木の影響で見通しも悪い。横断歩道をスピードを出して自転車で渡る人も多いため、少しの不注意が事故につながりそうな様子が見て取れた。府警はこの交差点について、横断歩道手前の徐行と左右の安全確認の徹底を求めている。 大阪の道路は南北を走る「筋」と東西に走る「通」が碁盤の目のように交わっていることが多い。その大きな道路の下には地下鉄が通る。 大阪府警のある幹部は「必然的に交差点の角には地下鉄の出入り口階段があり、左折時の見通しは悪くなる」と説明。大規模な交差点の上に設置されることの多い高速道路や歩道橋の橋脚などの構造物も、左折後の死角をつくる。 こうした現状に、府警も交差点の改造に乗り出している。4年のランキングでワースト2位だった「東天満交差点」では、すでに横断歩道を交差点中央に近づける「コンパクト化」を実施。また、こうした交差点での左折事故のほとんどに自転車が関係しており、府警も「青信号でも左右の安全確認をして横断歩道を渡ってほしい」と求める。 警察庁の統計によると、昨年全国で発生した交通事故件数は約30万7千件。平成25年の約62万9千件から半減している。インフラ整備や取り締まり推進が背景にあるが、交差点での事故防止は依然として課題だ。
事故原因を調査する交通事故鑑定人の中島博史氏は「交差点では、まずドライバーが車間距離をあける意識を持つべきだ。道路管理者は車線を色分けして示すなど、どこを走ればいいのかを分かりやすくする工夫が必要だ」と話した。(木津悠介)