財務省の思うつぼ「年収の壁」議論 本筋は29年放置の「ステルス増税」停止だ 代表の不倫報道も国民民主党に公約実行の責務
【日本の解き方】 自民党と国民民主党は所得税が発生する「年収103万円の壁」を引き上げる政策協議を始めた。マスコミでは「年収の壁」と説明されているが、筆者から見ると、問題を複雑化させすぎている。103万円だけでなく、「106万円」など社会保険料を含めればいろいろな「壁」があり、ある意味で財務省の思うつぼになる。 【年代別でみる】石破内閣を「支持する」が「支持しない」を上回った唯一の年代は? 問題の本質は、所得税における「基礎控除48万円」と「給与所得控除55万円」で合計103万円という額の大きさである。筆者は、財務省がいつもやるように主要各国の国際比較の資料を出した。 正直に言えば、いろいろな条件を合わせないと国際比較はできないのだが、各国の最低所得に近いところでみてみる。 直近の為替レートで米国の基礎控除が61万円、給与所得控除が219万円で合計280万円。英国は基礎控除214万円、給与所得控除はなしで合計214万円。ドイツは基礎控除143万円、給与所得控除は20万円で合計163万円。フランスは基礎控除160万円、給与所得控除8万円で合計168万円だ。 欧米に比べて日本の控除額が少ないことが分かるが、日本は税率を上げているわけではないので、「ステルス増税」だったということだ。日本の控除額は1995年に103万円に引き上げて以来、29年間据え置きされている。ステルス増税を29年も放置していいはずがない。「ステルス増税をやめろ」というスタンスでいい。 減収になるとの反論があるが、今の時点で減税政策をすれば、名目成長4~5%が達成でき自然増収で賄える。それまで増収がなくても外国為替資金特別会計(外為特会)や国債費などでも捻出できるので、財源問題はない。減税してうまくいったら、財務省が30年間ついていたウソがバレるのが怖いのかもしれない。 案の定、「106万円の壁」が出てきて、厚労省が所得なしでも原則として社会保険料を負担させると言い出した。問題を複雑化させるだけなので、基礎控除などの引き上げが終わってから検討すべき問題だ。 筆者のうがった見方だが、このように控除引き上げの足を引っ張る動きがあるのは、石破茂政権と野田佳彦代表の立憲民主党との間で「大連立」の匂いがある。正式な大連立にはいかないまでも、東日本大震災後の自民党と民主党のように、財政政策で協調関係が作られるのはまずい。国民民主党の提案にも自民党がなぜか強気であることにも一抹の不安がある。